二度と出られぬ部屋 最終章 オーバードーズ Part.1

 「いたいいたいいたいいたいっ!!!!」


 沙綾香の悲鳴が響き渡る。

 8人目のモーリスは、何も特別な犯し方をしているわけじゃない。壁に寄りかかった沙綾香へ、ただ背後から挿入しているだけだ。にもかかわらず、沙綾香は挿入直後に悲鳴を上げた。2分が過ぎようとしている今ではもう、完全に泣いてしまっている。

「いいぜぇ……いいプッシーを持ってやがる」

 モーリスは上機嫌で沙綾香の肩を舐めながら、腹に手を回して一層激しく腰を打ちつける。

「さけるっ、ほんとに裂けちゃうっ!!」

 沙綾香の悲鳴は止まない。そのひどい状況がさらに数分続き、ようやくモーリスが動きを止めた。

「いくぞ、出るぞおおおっ!!!!」

 そう言いながら腰を震わせ、当然の権利の如く膣内に精を注ぎ込んでいく。

「はぁっ、はっ、はっ、はっ、はっ…………」

 沙綾香は壁に縋りつくような格好のまま、ただ荒い呼吸を繰り返すばかりだ。最初の頃にはあれほど中出しに憤っていたというのに、もうその余裕もないんだろう。それどころか今の彼女からは、『ようやく終わった』という安堵感さえ滲み出ている。

 たっぷり数秒をかけて射精を終え、モーリスが逸物を引き抜いた。白濁を滴らせながらぶらりと垂れ下がるそれは、ペットボトルでもぶら下げているようだ。人間離れしているにもほどがある。

 しかも、もはや確実だが、セックスの順番はペニスのサイズの小さい順だ。つまり9人目と10人目は、そのモーリスのサイズすら超えていることになる。


「お前の番だぜ、ダリー」

 ロドニーがゴーサインを出すと、胸板が厚く、腹の出た男がパンツを脱ぎ捨てる。

「やーーっと俺の番か。ったく、何時間待ったんだ?」

 怒張は、力士を思わせる恰幅に見合ったサイズだった。長さはモーリスより少し短いが、太さはこちらが上だ。亀頭や雁首も人並み以上のサイズだが、あまりにもペニスの胴部分が太いせいで先細りに見える。

「や、やだ……!! なにそれ……さっきより、太い……!!」

 ダリーのペニスを目の当たりにした沙綾香は、壁際から離れて距離を取ろうとする。だが、モーリスとのセックスですでに足腰が立たない状態なんだろう。千鳥足で彷徨った末、左側のベッドに退路を阻まれてしまう。

「どうした。ここは土俵の上じゃねぇんだ、もっと自由に逃げ回ってもいいんだぜ」

 ダリーは、元力士なんだろうか。はっきりとした日本語を話しながら、じりじりと距離を詰めていく。

「いや、いやいやっ!! 本当にやめて、せめて休ませて!! あそこがヒリヒリして痛いの!!!」

 沙綾香はとうとう寝台に尻餅をつき、両の掌をダリーに向けて突き出す。それを受けてダリーは歩を止め、ロドニーの方を振り向いた。どうする、と目で問うダリーに対し、ロドニーは笑みを浮かべながら、親指を下に向ける。沙綾香の表情が凍りついた。

「やあああっ!!!」

 目の前まで迫ったダリーに対し、沙綾香は必死の抵抗を見せた。膝を曲げて、ダリーの分厚い肉体を蹴った。鎖骨を、肩を、胸板を、腹を、鳩尾を。だがその必死の蹴りは、足裏にこびりついた精液をダリーの身体に塗りつける結果にしかならなかった。

「あ……ああ…………!!」

 決死の抵抗が一切通じない巨漢を前に、沙綾香が震え上がる。対してダリーはにこやかだ。

「マッサージとは気が利いてんじゃねぇか。そうだよなぁ、日本人なら『おもてなし』の心は大事にしねぇと」

 奴はそう言って、なおも逃げようとする沙綾香の尻肉を掴み、無理矢理に尻を高く上げさせてから挿入を試みる。メリメリと音もしそうな、壮絶な挿入。

「あああああっ!!!!」

 沙綾香の顔は一瞬で歪んだ。

「おおおおっ、すげぇ締まるな!? 他の奴等にやられた後でこれって、えれぇ名器じゃねえかよ! オイお前ら、もっとアピールしろよこういうのはよ!!」

 ダリーは興奮気味に叫びながら、激しく腰を打ち込み続ける。

 今までにも増して絵がひどい。他の連中も暴力的なまでのマッシブさだったが、ダリーの力士体型は圧が違う。下手をすれば、奴の膨れ上がった太腿に、沙綾香の胴が丸ごと入ってしまいかねない。

 羆が、少女に覆い被さって暴れている……まるでそんな光景。だから、斜め上から見守る俺には、ほとんど状況がわからない。ダリーの巨体がすっぽりと沙綾香を覆い隠しているせいで、得られる情報と言えば、沙綾香がベッドに頭を擦り付けていることと、その手が必死にベッドシーツを掴んでいることだけだ。

「よく見えませんね。しかし、これも一興」

 俺の正面で、端塚が面白そうに呟く。

「あれは、元力士か」

「はい。私生活で問題行動を起こして十両で引退しましたが、三役入りは間違いないと噂されていたそうです」

「問題行動、というと……」

「性的なトラブルです。派手な女遊びをする力士は多いと聞きますが、その中でも目に余ったのでしょう。角界を追放になってからは、ハワイに渡ったそうですが、そこでも手癖の悪さは治らなかったようです」

 その逸話を聞いて、俺はまた後悔した。連中について知れば知るほど、醜悪なケダモノに思えてくる。どこかの犯罪者名鑑に載っている、俺に無関係なエピソードなら、気楽に聴くこともできるだろう。だがそのクズの中のクズは、今この瞬間も沙綾香を犯してるんだ。

「おらいくぞ、いくぞっ!!!!」

 ダリーは叫び、尻を高く掲げる格好の沙綾香の中へと精を注ぎ込む。沙綾香は反応しない。意地を張っているのか、それとも抵抗する元気もないのか。

 ともかくこれで、9人に順番が回った。残るはあと1人。

「……うお、なんだありゃ……!?」

「マジで人間のチンポかよ、あれ……」

 10人目が持ち物を晒した瞬間、俺の周りで薄笑いを浮かべていたセキュリティ連中の顔が凍りついた。そしておそらく、俺の顔も。

 形容するなら、それは『腕』。股の間から腕が伸びているようなものだ。というか本当に、すぐ傍にある沙綾香の細腕よりも明らかに太い。すでにロドニーの、ローストターキーのように中央が膨らんだ生殖器を見ているが、それでも戦慄が走る。


「いやあああっ、やめてっ! 無理、無理ぃっ!! 裂けるっ!!」

 沙綾香の悲鳴だ。彼女はベッドの上で男に覆い被さられ、馬並みのペニスを上から捻じ込まれているところだった。

「お前、さっきもそう言ってたな。んで大丈夫だったじゃねぇか。何度も嘘つくと嫌われんぜ」

 激しい抵抗を見越してか、10人目の男はすでに沙綾香の両手首を鷲掴みにして封じている。つまり、沙綾香はもう逃げられない。

「何度見ても、タイロンのコックは半端ねぇな。まさに馬並みだぜ」

「馬でも、あそこまで太ぇのぶら下げてるのは滅多にいねぇぞ。長さはともかくな」

「ほー、テキサス野郎が言うと説得力あんな。バーベキューと馬に関してだけは信用してやるよ」

 他の黒人連中も、10番目の男のペニスを別格と見ているらしい。だが、奴ら自身も巨根の持ち主だからか、セキュリティ共とは違って笑い話にする余裕がある。

 だが、いくら連中が和やかな空気を作ろうと、その視線の先で地獄が続いている事実は変わらない。

「はっはっはっ……そんなに奥、ガンガン突かないでっ!! 子宮が潰れちゃうっ、お願いいいっ!!!」

 沙綾香の息は、常に切れていた。酸素が吸えた僅かな機会は、すべて哀願で使い果たす。相手を睨みつける反骨心も、無反応を貫く気概も、すでにない。無くて当然だ。

 上下に激しく抜き差しされる逸物は、何度見ても目を疑う。太すぎる。長すぎる。距離があるから細部まで見えるわけじゃないが、それでも、割れ目の開き方が9人目までと違う気がしてならない。女性器をアワビだと形容するなら、あのアワビは、男2人が横から引っ張って引き裂いたような形をしている。そこへ来て沙綾香の身も世もない絶叫が響き渡るんだから、俺の心臓は早鐘のように鳴りっぱなしだ。

「ったく、うるっせぇな! チャイニーズでもそんなに喚かねぇぞ?」

 沙綾香の声がいよいよ悲痛さを増したところで、タイロンが溜め息を吐きながら手首を離す。そして一旦逸物を引き抜くと、キングサイズのベッド中央に寝転がる。手首を枕にし、完全に待つ姿勢だ。

「だったら、自分で入れろ」

 その命令に、足を内股に閉じながら苦しんでいた沙綾香が反応する。

「え……」

「早くしろ、ブツが乾いちまうじゃねーか!」

 怒号を浴びせられ、沙綾香は渋々ながらにタイロンの腰を跨いで、ゆっくりと腰を下ろしていく。

 太腿の震えがひどい。表情からして、羞恥心や恐怖もあるだろうが、何よりさっきのダメージが大きいんだろう。

 スレンダーな美少女が、凍えるように震えながら、腕のようなペニスを自ら受け入れていく。それは、さっきより酷い光景に思える。野次を飛ばす連中がさっき以上に勢いづいているから、たぶん俺の感覚は間違っていないんだろう。

 俺は疲れていた。見ているだけなのに。

 だったら、犯され、犯され、意地を張って、泣き喚いてきた沙綾香は、一体どれだけつらいことだろう。彼女の足の痙攣が、その答えなんだろうか。

「うぐう、いたい、いたい、い゛っ……!!!」

 歯を食いしばる沙綾香の顔が、東側のミラーに映っていた。

 彼女は涙を流している。泡だらけの唾を垂らしている。滝のような汗を流している。

 可哀想に思わないのか。勘弁してやろうとは思わないのか。

「よし、そのまま動け。プッシーを締めて、俺をイカせてみろ」

「早く動けよ、ジャパニーズ! いつまで経っても終わんねーぞ!」

 命令と、野次が聞こえる。どうやら俺とは、本当に感受性が違うらしい。

 沙綾香は上下に揺れていた。土台が黒で、跨っているのが白いから、モザイクのような視界でもよく見分けがつく。

「腰使いは素人丸出しだが、なかなか絶景じゃねえか。スタイルいいなお前、ダンサーみてぇだぜ」

 タイロンは唸るように笑いながら、手を伸ばして沙綾香の乳房を揉みしだく。

「やっ……!!」

 沙綾香は身を捩って嫌がりつつも、腰を上下させつづける。そして数分後、ようやく、本当にようやく、決死の努力が身を結んだ。

「いいぞ、いい、そろそろだ……ふーっ、出すぞ、受け止めろよ!!」

 大きく息を吐き出しながら、タイロンが太腿の筋肉を膨れ上がらせる。

「う!!」

 沙綾香が小さく呻き、背筋を伸ばした。まさに、膣の中にタイロンの精を浴びているんだろう。

「く……はぁ、はああぁ…………っ!!!」

 彼女はしばらく、きつく目を閉じていたが、最後には薄目を開けてタイロンを睨み下ろした。それを受けたタイロンの口笛は、賞賛の意味なのか、それとも煽りなのか。

「美しいですねぇ。苛烈な凌辱を受けて、身も心もボロボロに追い詰められているというのに、凛とした光がある」

 端塚も感嘆の溜め息を吐く。こいつにも美しいと思う心はあるのか。

 もっとも、奴の見ている光景は、俺とはまったく違う色かもしれないが。




                 ※




 『十番勝負』は、ようやく終わった。タイロンの上から退いた沙綾香は、そのまま貧血でも起こしたように倒れこむ。限界だ。あるいは限界など、とっくに越えていたのかもしれないが。

「へへへ、すげぇ……マンコがグチャグチャになってやがる」

「ああ。まるで100人以上に犯されまくったみてぇだ。やっぱ黒人はすげぇぜ」

 セキュリティ連中が、倒れ込んだ沙綾香の股座を見て笑う。

 確かに、離れていても見てとれる拡がり具合だ。なまじ最初の形が綺麗だっただけに、なおさら変化がわかりやすい。どれだけのダメージを受ければ、あれほどに形が崩れるんだろう。何度も手を突っ込み、悪意をもって掻き回し続けても、あそこまでになるものだろうか……。


「だいぶ参ってるらしいな」

 息も絶え絶えな沙綾香に、手越が声をかけた。沙綾香は仰向けに転がったまま、首だけを横向けて手越の方を向く。

 手越の手には、食器を載せた盆があった。桜織の映像を思い出す光景だ。あの時の料理は、女を強制的に発情させるものだった。桜織は悪意に満ちたそれを嫌がったが、手越に避妊薬入りだと言い含められ、不本意ながらに平らげたんだったか。

「スタミナチャーハンとホルモンスープだ。シェフが作ってるから、それなりに美味ぇぞ」

 手越はそう言って、ベッド近くのガラステーブルに盆を置く。

 奴の言う『シェフ』とは、地下20階にあるレストランの調理係だろうか。だとすれば腕は確かだろう。気楽に料理を味わえた最初の数日間、俺はあのレストランで供される、あらゆる料理に舌鼓を打ったものだ。もう、遥か昔のことに思えるが。

「食欲なんか、あるわけないでしょ……」

 そう告げて顔を背ける沙綾香に対し、手越は顔の皺を深める。

「食わねぇとこの後、ますます悲惨なことになるぜ。テメェの身体だ、今どうなってんのかは解ってんだろ。黒人共の馬鹿でけぇチンポを代わる代わる突っ込まれて、マンコはもうズタズタのはずだ」

 その一言で、沙綾香は目を見開いた。

「だが当然、これでお開きってワケじゃねぇ。お前にはこれからもあの連中の相手をさせ続ける。となりゃ、少しでも筋肉や粘膜を回復させなきゃあな」

 手越はそこで言葉を切り、食器を指で弾く。響くのは、どこまでも冷たい音。嫌でも意識がそちらに向いてしまう。

「スープの具は、豚の胃と大腸、根菜にマメ。チャーハンのコメは玄米で、肉は血でできたソーセージをオーブンでカリカリに焼いたもんだ。コラーゲンと鉄分・ミネラルがタンマリ入ってっから、傷の治りが早まるぜ。今のお前にゃ、絶対に必要だと思うがな」

 沙綾香の顔が、手越の方に向き直った。それは、彼女自身がそれを必要と判断した証拠だ。手越はそれを見て目を細める。

「迷ってる暇はねぇぞ。ダメージを負った時のケアは、早ぇに越したことはねぇ。マンコが使い物にならなくなってもいいのか?」

「!!」

 沙綾香は、とうとう完全に身を起こす。その視線は上を向いた。俺のいる方だ。

「沙綾香……!」

 思わず言葉が漏れる。

 まだ俺を意識してくれるのは嬉しい。だが、それ以上に彼女自身の体が心配だ。手越の言葉を鵜呑みにするわけじゃないが、今の彼女が栄養を取るべきなのは間違いない。

 食ってくれ、沙綾香。俺は視線で沙綾香にそう訴える。すると彼女は、ベッド端に両脚を揃え、ついに床に下りた。

「……やはり彼女は、貴方に依存しているようですね」

 端塚がほくそ笑む。奴の思惑通りというのは不愉快だが、沙綾香と繋がりがある事実は嬉しい。複雑な気分だ。


「どうだ、イケるだろ。ホルモンってなぁ適切に処理すりゃ、コクがあってひたすらに美味ぇんだ。脂っこすぎねぇ分、歳がいっても食えるしな」

「手越のダンナよう、アンタたまにジジくせぇぞ」

「バカヤロウ、年季が入ってると言え若造が!」

「ほぉ、そりゃ『面倒臭い』の同義語か? 日本語は奥が深ぇな」

 手越とロドニーが馬鹿げた口論を繰り広げる傍らで、沙綾香は黙々とスプーンを口に運ぶ。

 愉快ではなさそうだ。俺の前でハンバーグを頬張っていた時には、鼻歌まじりだったというのに。それでも、彼女は食べつづける。すべては体を回復させるため。小さなグリーンピースさえ脇によけていた彼女が、意を決してインゲンを口に運び、顔を顰めながら必死に咀嚼する様は、見ているこっちまで泣けてきそうだ。


 ────頑張れ、沙綾香。頑張れ!!


 俺は心の中で、精一杯のエールを送る。

 それが彼女に、少しでも良い効果を齎すと信じて。

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Siti Dara

Hi. I’m Designer of Blog Magic. I’m CEO/Founder of ThemeXpose. I’m Creative Art Director, Web Designer, UI/UX Designer, Interaction Designer, Industrial Designer, Web Developer, Business Enthusiast, StartUp Enthusiast, Speaker, Writer and Photographer. Inspired to make things looks better.

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