二度と出られぬ部屋 最終章 オーバードーズ Part.1

 「どうぞ」

 端塚がティーカップに湯気の立つ紅茶を注いで、俺に差し出す。こいつの事だ、この紅茶にも何か混ぜているのかもしれない。ただ、今すぐに俺を始末しようという様子でもなさそうだ。それに緊張のせいで、喉の渇きにも耐えがたい。

 俺が渋々ながら紅茶に手を伸ばした、まさにその瞬間。天井のスピーカーにノイズが走る。

「あんた達、本当に何がしたいわけ!? もういい加減、あたしとセンセを解放してよ!」

 天井のスピーカーから音声が聞こえてきた。沙綾香の声だ。どうやら下のフロアの声を拾っているらしい。マイクの性能差か、端塚の時よりも明瞭な音声だ。

「解放か、いずれはするぜ。その邪魔くせぇ自我が消し飛びゃあな。やりてぇことについても、答えはシンプルだ。繰り返し犯し、辱めて、思想を根本から変える──いわゆる『洗脳』だな」

 手越の返答に、沙綾香の目つきが鋭くなる。

「はぁっ、バカなの? それって、『今から家にドロボウに入ります』って言ってるのと同じじゃん! 盗まれるわけないでしょ、そんな宣言されて!」

 沙綾香はきっぱりと言いきる。すると、手越は肩を揺らした。ククク、と笑い声を漏らしながら。

「何がおかしいわけ!?」

「いや、聞き覚えのある言葉だと思ってよ。お前の先輩も、そんな言葉を吐いてたもんでな」

「せ、先輩、って……ウチの学校で、他にもこんな目に遭った人がいるの!?」

「おう、いるぜ。両手の指より多くな」

 手越は煙草を咥え、上を見上げた。濁った瞳は端塚を捉えている。端塚が小さく頷くと、奴は煙を吐き出した。

「この施設は、会員制の秘密倶楽部でよ。クソ厳しい審査をクリアして、バカ高ェ年会費を払う見返りに、ゴールドライセンスが手に入るんだ。極上の女が奴隷として調教される様を鑑賞したり、場合によっちゃ調教そのものに参加できる権利よ。アナウンサーやアイドル崩れ、一流キャバ嬢に婦警、女弁護士……調教対象は色々だが、一番人気は何つっても現役の女子高生だな。それも名門校に通うお嬢様なんてことになりゃ、客の食いつきがまるで違う」

 手越はそう言って、煙草の先で沙綾香を指し示す。屈指の名門校・蒼蘭女学院に通う、財閥令嬢を。

「それって、つまりウチってこと……?」

「ああ。しかも名門って呼ばれる女子校にゃあ、日本全国から金の卵が集まってくる。お前ら5人がいい例だ。お前を中心に、仲良しグループをざっと掻っ攫っただけでも、大したツブ揃いじゃねぇか。『白鳥 祐希』は、強豪として名高いソフトボール部のエース。『福田 千代里』は、伸びやかなソプラノで合唱コンクールの会場を騒然とさせた天才児。『廣上 藤花』には剣道全国大会での優勝経験があり、『瀬戸口 桜織』は学科試験で常に全国トップ5に入りつづけている」

 つい先ほど脳裏に過ぎった4人の名前が、次々に挙げられる。輝かしい未来の約束された、才媛達。その夢が潰されたんだ。こんな、いかがかわしい倶楽部に連れ込まれたせいで。

「ちょ……ちょっと、待ってよ」

 ここで、沙綾香が声を震わせた。目が泳いでいる。まるで、恐ろしい事実に気がついたかのように。

「“お前を中心に、仲良し5人組を掻っ攫った”……?」

「ああ」

「じゃ、じゃあ……皆があんな風になったのって、あたしの、とばっちりってこと…………?」

「当然、そうなるな。」

 さらりと吐かれた肯定の言葉で、沙綾香が凍りつく。自分の巻き添えで、仲の良い友人達が壊された──そんな物言いをされて、平然としていられるわけがない。

「おーい、大丈夫か?」

 沙綾香を追い込んだ元凶が、白々しく問いかける。ただし、心配しているわけじゃなさそうだ。手越の口元は、上向きに歪んでいるんだから。

「いいか、嬢ちゃん。お前さんには、“もうひとつ”気がつかなきゃならねぇ事実があるんだぜ?」

 手越はその一言で、揺らぐ沙綾香の意識を引き寄せた。そして、ワン・ツーの二打目とばかりに、追い討ちの言葉を囁きかける。

「お前さん……そもそも誰に言われて、この倶楽部に来た? お前がここに来るよう手引きしたのは、どこの誰だ?」

 手越の言葉を耳にして、沙綾香は少し考える素振りを見せ……

「あっ!!」

 驚愕の表情に変わった。

 どういうことだろう。俺も彼女の思考を追うべく、古い記憶を探る。

 俺にとっての最も古い記憶は、彼女達5人とエレベーターで一緒になった時だ。


『これから何すんだろうねー、あたしら。どうせなら座学じゃなくて、身体使う系がいいな』

『なんかさ。こう地下深くだと、裏カジノとかありそうじゃない?』

『ははっ、いいなカジノ! ベガス的な?』

『もうっ、馬鹿言わないの。授業の一環って聞いたでしょ』


 壁に寄りかかる沙綾香の傍らで、他の4人はそんな話をしていた。彼女達は、『授業の一環』と言い含められてこの施設に来たんだ。

 待て。

 だとするなら、彼女達をこの場所に誘導した、そもそもの元凶は……

「そうさ。お前ら5人を見繕ったのも、ここへ来るよう仕向けたのも……蒼蘭女学院の理事長だ。俺達の“お得意様”のな!!」

 手越はそう言って、煙草片手に大笑いする。その正面で、沙綾香の顔から血の気が失せた。

 彼女とその級友にとって、蒼蘭女学院は『戻るべき日常』の象徴であったはずだ。よもやその学校こそが、この地獄への入口であったとは。

「もしかして……毎年、先輩が何人か『課外学習』に行ってたのって……」

「ああ、調教されてたわけだな。薬を投与しつつ、セックス漬けにしてよ。しぶといガキでも、1週間もありゃチンポの事しか考えられねぇケダモノに成り果てる。ただ、お前のツレはなかなか粘ったな。藤花の心が折れたのが7日目の夜、桜織の脳ミソが焼き切れたのは210時間を過ぎたあたりだったか」

 その言葉で、沙綾香の顔が引き攣った。俺も心臓を掴まれた気分になる。

 忘れられない。

 地下15階で、祐希が自我を崩壊させられた事を。

 地下16階で、千代里が喉奥を蹂躙され、哀れに泣き叫んでいた事を。

 地下17階で、藤花が散々に辱められ、大和男子として死んだ事を。

 地下18階で、桜織が繰り返し絶頂させられ、獣と成り果てた事を。

 あんな調子で追い込まれれば、それは大抵の女子高生が1週間ともたないだろう。

「く、ぅっ……!!」

 まざまざとあの光景を思い出したんだろう。沙綾香は拳を握りしめ、真っ直ぐに手越を睨み据える。愛を囁く時には本当に優しい目つきをする彼女だが、元々の吊り目の角度をさらに上げた時の凄みは相当なものだ。だが手越は、マイペースに煙草をふかす。

「そう睨むなよ。別に、ずっとここに閉じ込めとこうってんじゃねえ。一通り調教が済みゃあ、記憶だけを消して学校に戻してやる。さすがに金の卵をいつまでも監禁してちゃ、怪しまれちまうからな」

「記憶を、消す……?」

「ああ。さっきも言った通り、俺ら調教師がやってんのは実質的に洗脳なんだがよ。それとは別に、催眠に特化したチームもいるわけだ。出番は一番最後、洗脳済みの奴隷を外に送り返す直前でよ。ここでの記憶を消去して、代わりに適当な記憶を植えつけんだ。『出来心で酒に手を出した結果、悪酔いして行きずりの男とヤりまくってた』とかな。ストーリーは奴隷の性格に応じて変えるらしいが、本人に明らかな非がある流れにするそうだ。清廉潔白そうな人間でも、密かに自覚してる負い目ってのはあるもんで、そこを突くらしい。だから解放された『奴隷』は、たとえ調教された身体に違和感を覚えても、泣き寝入りするしかねぇ」

「ひ、ひどい!」

「そうか? 人前でクソしたり、腹の出たオッサン共とヤリまくったなんて記憶は、上書きされちまった方がマシだと思うがな。ま、いずれにせよだ。地上に戻った奴隷は、一見、前と変わらねぇ生活を送りはじめる。そしていずれは金の卵としての才能を開花させて、特定の分野で強い影響力を持つようになる。俺らはそこでまたガラを攫って、思い出させてやるわけだ。自分が何者なのか、誰が“ご主人様”なのかをな」

「え? でもここの記憶って、外に出る時に消されるんじゃ……」

「ヒトの記憶には、『脳の記憶』と『体の記憶』の2種類があってよ。『脳の記憶』が消えても、『体の記憶』は残ったままなんだ。どんだけ忘れっぽい奴でも、箸の持ち方は忘れねぇだろ。それと同じで、一度奴隷に堕ちた女は、体が調教師とのセックスの味を覚えてる。言ってみりゃ種を植え付けられた状態だな。そこで改めてセックス漬けにしてやりゃ、種が発芽して花が開く。こうなりゃあ心強いぜ。培った名声やら人脈やらを、テメェの心底からの望みとして、倶楽部のためにフル活用してくれるんだからな」

 淡々と語られる悪事の全貌に、沙綾香の顔が青ざめていく。

 悪夢じみてはいるが、今語られたことは夢じゃない。

 過去、この倶楽部で起きた現実。

 現在、上のフロアで級友達を苦しめている現実。

 そしてこれから、いよいよ沙綾香に降りかかろうとしている現実なんだ。




                 ※




「……よう旦那、話はまだ続くのか? 流石にもう我慢の限界なんだが」

 手越の言葉が途切れたところで、黒人の1人が呼びかける。目を血走らせ、鼻息は荒い。我慢の限界、という言葉に偽りはなさそうだ。

「ああ、悪ィ。歳食うとハナシが長くなっていけねぇや。いいぜ、犯しな」

 手越のその言葉に、10人の調教師共が歓声を上げた。するとそれを遮るように、手越が『ただし』と付け加える。

「一人ずつだ。俺が名前を呼んだ順に、一対一(サシ)で抱け」

「お……オイオイ、マジかよ!?」

「こんだけ待たせといて、そりゃねぇだろ!!」

 焦らされた上での更なる制限に、黒人共が不満を露わにする。するとその後方で、ロドニーが頭を振りながら舌を鳴らした。

「落ち着けよ兄弟。要するにだ、テメェら一人一人の存在をアピールしろってこった。この太ぇのが俺のコック、この反り返ったのが俺のコック、ってな。初対面なんだ、まずは挨拶から始めようぜ」

 その補足で、調教師連中の雰囲気が和らぐ。一対一というシチュエーションに興味を持ったらしい。

「挨拶か……なるほどな」

「考えてみりゃ、滅多に食えねぇレベルの上玉なんだ。サシでじっくり味わうってのも悪くねぇ」

 とりあえず暴動の恐れはなくなったと見てか、手越が溜め息交じりに沙綾香の方を振り返る。

「さぁお嬢様、“十番勝負”といこうじゃねぇか」

 手越はそう告げると、10人の黒人調教師の中から一人を見定め、その肩を叩いた。

「まずはお前からだ、マーキス!」

 マーキスと呼ばれた男は目を見開きながら口笛を吹き、ボクサーパンツを脱ぎ捨てる。覆いの下から現れたのは、まさしく『巨根』。黒人特有の、節くれだった木の根のような剛直だ。

「ひっ!!」

 沙綾香が顔を引き攣らせる。無理もない。彼女は男慣れしていそうな雰囲気とは裏腹に、かなり奥手だ。俺の逸物を覗き見ていた時も、興味半分、恐れ半分という様子だった。その俺の物より数周り大きい、しかも異人種のペニスとなれば、恐怖の対象でしかないだろう。

 マーキスはゆっくりと歩を進め、沙綾香を壁際に追い込んでから、逸物を相手の下腹に押し当てた。斜め上に反り勃った先端部分が沙綾香の臍を撫でるとなれば、長さは20センチを下らないだろう。

「やぁ……っ!!」

「そんなに怯えるなよ、ジャパニーズ。よく見てみな、ダックスフンドみてぇで可愛いだろ?」

 マーキスはそう囁きながら、逸物で沙綾香の下腹を擦る。

 沙綾香には、マーキスの言葉が理解できただろうか。訛りの強い黒人英語だ。多少英会話ができたとしても、いきなり聴き取るのは難しいかもしれない。ただ、一つだけ確かな事があった。彼女がマーキスに心を許していないという事だ。

「ヘンなもの押し付けないでよ、このゴリラ!!」

 そう叫びながらマーキスを睨み上げ、胸板を押し戻す。身長差約30センチ、肉体の体積でいえば実に3倍ほどの差がありそうな巨漢の黒人相手に、よくも反抗できるものだ。

「ほお。温室育ちの令嬢にしちゃ、大した根性だ。だが、本物の『恐怖』を味わっても、その強情を張り続けられるか?」

 沙綾香の気丈さを目の当たりにし、手越が笑う。その笑い声の中で、マーキスが自分の手にツバを吐きかけた。そしてその手の平で逸物を扱き、粘液を纏いつかせてから、沙綾香の右太腿を持ち上げる。

「Get off me(離して)!」

 沙綾香は叫び声を上げ、マーキスの腕を叩く。英語だ。名門校に通う生徒であり、財閥令嬢として英才教育を受けてきたんだから、英語を話せても何の不思議もない。だが俺は心のどこかで、そうでない事を祈っていたようだ。英語が理解できるということは、あの調教師共が発するスラムの汚物のような言葉で、いちいち心が傷つくということだから。

「うひょー、痛ぇ!」

 マーキスはおどけてみせるが、沙綾香の必死の抵抗を受けても身体の軸がぶれない。それどころか、一瞬の隙をついて沙綾香の右足を抱え上げ、開いた股の間に亀頭を宛がう。立ち鼎の体位だ。

「いやあっ!!」

 沙綾香の絶叫と、亀頭が沈む込むのは同時だった。

 マーキスのペニスは、直径5センチはあるだろうか。数日前にセックスを覚えたばかりの膣には、明らかに無理があるサイズだ。当然、挿入はスムーズにはいかない。何もない場所を掘削するかのごとく、少しずつ、少しずつ、黒い極太がピンクの肉の中へと隠れていく。

「う、くっ……!!!」

 沙綾香は、呻いた。食いしばった歯や、引き攣る頬が、相当な痛みと恐怖を物語ってもいた。それでもなお、彼女は相手を睨み上げる。睫毛の長い目を、アーモンド型に見開いて。

「ヘヘヘへ、いい目だな。俺のを突っ込んでも睨んでくるアジアンは久しぶりだぜ。嬉しくなっちまうなあ!!」

 マーキスはそう言いながら、丸太のような腕に血管を浮き立たせ、本格的な挿入を試みはじめた。

「ひっ、ぐ……!!」

 苦しいんだろう。沙綾香の表情は、破瓜の瞬間より壮絶だ。内腿の強張り具合も、遠目に見て取れるんだから相当なものだ。どう見ても無理のある挿入。だがその挿入は、黒人の剛力で成し遂げられる。あらゆる無理を押し潰して。

「んだよ、もう奥に届いちまったのか。まだまだ残ってんのに」

 挿入開始から二分ほど経ったところで、マーキスが舌を鳴らした。奴の黒い剛直は、半分近くが露出したままだ。だが、たとえ欧米人女性でも、あんな馬鹿げたサイズを丸ごと飲み込むのは無理だろう。

「フトモモの肉が硬ぇぞ。もうちっとリラックスしろよ」

「だ、だったら抜いてよっ!! 大きすぎて、骨盤が軋んでるの……あそこの周りの筋肉も引き攣ってる。いやだ、いやだよ……こんなの、開きっぱなしになっちゃう!!」

「そんなに心配すんなって。オレの昔の女は、拳が入るぐらいまで拡張したがよ、次の年にゃあ郵便屋のチェリーボーイとしっぽり楽しんでやがったぜ。ま、それに腹が立ったから、ダブルフィストで女として終わらせてやったがよ」

 マーキスは鬼畜めいた逸話を披露しながら、強く腰を打ち付けた。

「ぐうっ、う゛、うあ゛っ! やめて、ホント痛いってばっ……!!」

 沙綾香が悲鳴を上げる中、抜き差しが繰り返される。陰唇が限界まで横に拡がり、怒張が引かれるたびに桃色の粘膜が捲れる、恐るべきピストン。沙綾香と黒人とのセックスが、ついに始まったんだ。



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Siti Dara

Hi. I’m Designer of Blog Magic. I’m CEO/Founder of ThemeXpose. I’m Creative Art Director, Web Designer, UI/UX Designer, Interaction Designer, Industrial Designer, Web Developer, Business Enthusiast, StartUp Enthusiast, Speaker, Writer and Photographer. Inspired to make things looks better.

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