『Shirayukihime to 7 Nin no Koibito』to iu 18 kin Otomege Heroin ni Tenseishiteshimatta Ore ga Zenryoku de Oujitachi kara Nigeru Hanashi chapter 37

6・俺の残念な逃避行について。……首っ丈。
―――そしてシナリオ通りに俺達は妖狐に敗北した。

ジキジキジキジキ…
ゲッゲッゲッ…

 近くで聴こえる虫の音に梟の鳴き声。
 遠くでは狼の雄叫びに、縄張り争いを繰り広げている魔獣達の唸り声まで聞こえる。

「俺はてっきり『野宿なんて僕に出来る訳ないだろう!!』とおっしゃられるものだとばかり思っていましたよ」

 時刻は深夜。
 場所は敗走先の森の中。

 妖狐に敗北してから早い物で1週間が経過した。

「馬鹿かお前は。この非常事態にそんな悠長な事を言っていられる訳がないだろう」

 不機嫌そうな顔でブヨや薮蚊を追い払うエミリオ様に毛布を渡しながら、俺は苦笑した。
 慣れない野宿にすぐに根を上げると思っていたエミリオ様だったが、この王子様、意外な事に頑張ってくれている。

「今日から森で野宿ですから。灯りないですけど大丈夫ッスね?」
「フン、勝手にしろ」

 いつも灯りがないと眠れない王子様だったが、夜の森はいつもの我が侭を言える場所ではない事くらいは判っているらしい。文句はない様だ。

 夜の森は人の世ではない。

 夜の森では何が起こってもおかしくない。
 森とは本来ならば人が踏み込んではならない場所なのだ。昼は我等が人間がお目零しを戴いているだけで。
 この世界では、夜の森に迷い込んだ人間に待っているのは”死”と言われている。
 だから女子供も木こりや凄腕の猟師でさえも、日没前に森を出る。 

 しかし俺はエミリオ様の護衛になる前は、主に郊外の夜間警備や見回りなどをして来た騎士だ。
 森の中で狼や魔獣に襲われたりなどの不慮の事故にあったり、迷って街に帰って来れなくなってしまった人間の救出に夜の森に出向いた事は何度だってあるし、夜の森での夜営の経験も生延び方も知っている。そんな俺のキャリアを知っているからだろう、エミリオ様も森に入ってからは随分と素直だ。
 森でやむを得ず夜営をする時は、決して火を焚いてはいけない。
 火を熾すと魔獣は寄って来なくなるのだが、その代わりに光に吸い寄せられる虫のように妖魔達が集まってくる。
 となると少しでもリスクの少ない方の選択をするのが最善だ。

(今晩は月があって良かったな)

 俺は空を見上げて目を細めた。
 月星が夜空にない夜の森は危険だ。
 そんな夜森の中で魔獣に襲撃されれば、暗闇の中、足元もおぼつかない状態での戦闘となる。
 しかしそれでも妖魔に襲われるよりはずっとマシなのだ。
 妖魔の強さにも勿論強弱はあるが、魔獣と比べたら脅威の度合が違う。
 妖魔の中には稀に魔獣よりも弱い者もいると聞くが、それでも遭遇する妖魔の強さが未知数な限り、決して出会いたいとは思えない。

 エミリオ様はすぐに寝息を立てはじめた。
 一人になって人心地付くと、やはりあの日の事を思い出さずにはいられない。

(寵妃ホナミ。あいつ、一体何者なんだ……?)

 俺の思考はすぐに1週間前のあの日へと舞い戻った。



『ルーカス!!後だ!!』

 エミリオ様の声に後を振り返るが時は既に遅し。
 後に膨れ上がった光りの玉が弾ける。

パアアアアン!!

 全身を襲う衝撃波に、俺の体は一気に壁へと吹き飛ばされた。

ガッ…!

『かは…っ、』

 背中から煉瓦造りの壁に衝突した俺は、後頭部を強か打ち、数分間意識が飛んでしまっていた様だった。

『口ほどにもない』

 視界が定まって来ると、俺が吹き飛ばされる前は玉座の前にいたホナミが主人に1歩1歩近付いて行く姿が見えた。

(やべ、早く起きないと…)

 立ち上がろうとした瞬間、全身に激痛が走り思わず床に膝をつく。
 喉が妙に粘ついて、思わず咳き込み床に吐き出した物には赤い物が混ざっていた。

 ホナミは呪文詠唱もなく、金色に光る炎の狐達を際限なく作り出す事が出来た。
 この狐、実体はなく剣で切っても切ってもすぐに復活する。
 それでもそんな金狐達の攻撃をすり抜けて、なんとか妖狐の元まで辿りついた俺は、奴の出した衝撃波に壁際まで吹っ飛ばされた。

(やはり無謀だったか…)

 俺が道を開き、エミリオ様に妖狐の止めを刺して貰う。エミリオ様が打ち損じたら、俺がもう一撃討ち込んで止めを刺す。そういう算段だったのだが、呆気なく失敗に終わってしまった。

カラン、

『クッ…、』

 金狐の攻撃に、エミリオ様の宝剣が床に転がる。
 自分の目の前まて来たホナミに、エミリオ様は大国の王太子の威厳溢れる表情(かお)で憮然と言い放つ。

『殺せ』

 ホナミは王子の言葉に薄く笑った。
 妖狐の白い手が、主の首を締め上げながら宙に持ち上げる。

『エミリオ様!!』

 手を伸ばして叫ぶが、主の元には届かない。

『最後に言い残す事は?』
『妖魔の本性の方は随分厚化粧だな』

 首を絞められながら、その苦痛に顔を歪めながら嘲うエミリオ様のその言葉に、玉座の間にブワッと殺気が膨らんだ。

ガッ!!

『このクソガキ…!!』

 そのまま妖狐に床に投げ捨てられる様に叩き付けられるが、エミリオ様はいつものあの小憎たらしい顔でフンと鼻を鳴らして嘲うだけだ。
 妖狐の白眼の部分までが真っ赤に染まるのがこの距離からでも判った。
 ホナミの白眼の内に、幾条も糸蚯蚓いとみみずのような血管が浮きあがっている。

(あああああ、言っちゃった!!エミリオ様のお馬鹿!!)

 確かに妖狐は圧化粧と言うか。――…顔に真っ白に白粉を塗り、目元や額、頬には何本もの太い紅色のラインを引いている。
 目元のアイラインらしき物以外は、彼女が妖術を発動させると瞳と一緒にボウッと光るので化粧ではなく何かのまじないだとは思うが。

『跪いて足を舐め、許しを請えば命を助けてあげてもいいのだけれど、どうする?』
『この僕を誰だと思っている。そんなみっともない真似をする訳ないだろう?ーー…殺せ』

 エミリオ様の不躾なまでに強いその視線は、既に何かを覚悟している様だった。

『そんなに死にたいのなら、殺してあげる』

 カミソリの様に冷たく鋭い妖狐の眼差しに、彼女からほとばしるその冷気に、俺が今着ている騎士服が、凍り付いてパリパリと音を立ている様なそんな錯覚に襲われる。

(間に合え!!)

 足元に転がった愛剣を拾い、二人に向かってダッシュをかけた。
 妖狐の手の平の上でどんどん大きくなって行く紅い火の玉に、危機感が募る。

(間に合え間に合え間に合え間に合え!!)

 エミリオ様が何故か口元に微笑を浮かべながら目を伏せる。

―――間に合わない!?

 俺がゾッとしたその瞬間、

バシャッ!!!!

 妖狐の頭上から、大量の水が降って来た。

『何、何これは!!?』

 消える金狐の群れ。
 目元を押さえて蹲る妖狐。

『エミリオ様、無事ですか!!』

 天井から大きなバケツを持って飛び降りてきたのは、見覚えのある顔ぶれの男達だった。
 以前陛下にホナミの事を忠言をし、表向き処刑された事になっていた者達だ。
 彼等は首を落とされる直前、アミール王子の手引により脱獄し、影ながら命を救われていた者達だった。

『これは聖水です!!聖地へ行き、大量に汲みに行って来たのです!!』
『おのれ……!!』

 溶ける化粧、溶ける肌。頭皮からボロボロと落ちて行く銀の髪。
 溶けた肌から肉が剥き出しとなり、おぞましい外見となる妖狐の周りにまた大量の金狐達が産まれる。

『わし等がこの国の王子だと認めているのは、陛下とベルナデット様の息子のアミール様とエミリオ様だけじゃ!!』
『どうかここは私達に任せてお逃げ下さい、アミール様とのお早いご帰城ををお待ちしております!!』
『お前達……』

 金色の炎に身を焦がしながらも金狐達を押さえながら必死に叫ぶ男達。
 尻餅をついたまま呆然と見上げるエミリオ様の腕を引いて強引に起こし、俺は走り出す。

『恩に着るぜ、爺さん達!!』

(またお兄様に守られたな)

 恐らく聖地まで聖水を汲みに行かせたのも、自分の留守中に弟を影から守る様に命じたのもこの人のお兄様なのだろう。

『門を閉ざせ!!城門を閉じろ!!兵を出せ、追え、あの二人の首を跳ねろ!!』

 玉座の間から出た時、後からホナミのヒステリックな声が聞こえる。

『離せルーカス!!あの者達の命が!!僕も戻って戦う!!』

 ホナミの声に弾けた様に我に返ると暴れ出すエミリオ様に、俺は一喝した。

『寝ぼけた事言ってんじゃねぇ!!あいつらは命を懸けてあんたを守ったんだ、今はその命を散らす時じゃねぇ!!厳守すべき時だ!!いいからさっさと逃げますよ!!』
『しかし!!』
『あんな王子様!人類皆平等っつーが、あんた等王族の命は俺達平民の命よりも遥かにお高いんだ!あんたらの背中にはこの国の5000万の民の命が懸かってる!それを忘れたとは言わせねぇ!何故あんたに命を捧げる者がいるか分かるか!?あんたにしか出来ない事があるからだ!あんたには王族の義務って奴がある!我が国が他国からの暴力や侵略に晒された時に民を守ること。規律や規範を用いて、民に一定の秩序を与え、弱者を守ること。限られた資源と条件で国力を高め、より豊かでより平和で安全な国づくりをすること。――それは俺達平民に出来る事じゃねぇ、あんた等にしか出来ない事なんだ!だからあいつ等も命を懸ける!それを無駄にすんな!!自分の命の価値とその身に背負った重圧を思い出せ!!』

 エミリオ様は俺の言葉に大きく目を見開いた後、俯くと「うるさい」と小さくぼやいた。

『……お前なんかに言われなくても、そんなの充分承知している』 

(逃げきれるか……!?)

 吹っ飛ばされた時、肋骨に皹が入ったかもしれない。
 体が悲鳴をあげている。
 ここで兵に囲まれたら、電池の切れた玩具の様になってしまったエミリオ様を守り逃げ切れるかどうか怪しい。

 しかし俺の心配は杞憂に終わる。

 俺達は兵に襲われる事もなく城を脱出する事が出来た。
 城を出た時、俺は視線を感じて後を振り返る。

(陛下…?)

 俺と目が合うとその男はすぐに部屋の奥へと引っ込んでしまったので、顔を良く確認する事は出来なかったが、――…城の窓から城門の堀を渡る俺達を見下ろしていたのは、確かにこの国の国王陛下、ラインハルトだった。

(もしや陛下が助けてくれたのか?)

 そう考えると辻褄が合う様な気もする。
 何故なら俺達が飛び出した時、城門は開いたままで見張りの兵すらいなかったのだから。



『ぜんぶ、ぜんぶ、アミールのせいだ…!!アイツが全部悪い。次期国王の義務だけではなく兄の義務まで放棄して弟である僕を守らないとかふざけている!あの男が無責任だからこんな事になったんだ!一体今どこにいるんだあの男は、本当に……』

(兄の義務って何だ)

 甘ったれプリンスの泣き言に、俺は思わず苦笑してしまった。

 前世にも今世にも血の繋がりを問わず妹弟いたが、そんな義務なかったぞ。
 上の兄弟が下の兄弟を可愛がるのも愛するのも義務なんかじゃない。
 可愛いと思える要素があれば勝手に可愛がるし、愛するにたる要素があれば愛する時もある。

 親が子供を産んだ瞬間に発生する類の義務は、兄弟には存在しない。

―――しかし、

『何言ってんだ、あんた程アミール様に守られてる奴もいないだろうに』

 あの時自分達の窮地を救った兵士達の事情を説明すると、エミリオ様は唇を噛み締め無言になった。

(やれやれ…)

『エミリオ様もアミー様が恋しいようですし、そろそろお兄様をお迎えに行きますか?』
『え…?』

 しばし部下の言っている言葉の意味が解らなかったらしくポカンとしていたエミリオ様だったが、次第にその眉が、目尻が吊り上がって行く。

『なんで、お前があいつの居場所を知っているんだ!?』
『アミー様が城を出て行く時に、潜伏場所の地図を頂いたので』
『な!なんだって!!何故アミールの奴は直接僕に言わない!?』
『だってエミリオ様、ずっとお兄様を無視してたじゃないですか』
『だが!!しかし!!…………くそっ、』

―――そして俺達はリンゲイン独立共和国との国境付近にある森を目指して逃亡し、今に至る。


****


 どうやら俺も疲れが溜まっていたらしく、あれからすぐに眠りに落ちてしまった。

(これは…)

 夜の海の優しい波の音。
 テントの中にまで漂う潮と磯の香り。

 いつしか忘れてしまった、幼い日のあの記憶。

(夢……?)

―――あれは前世、小学生時代にアキラ達と九十九里にキャンプに行った夜の出来事だった。

 必死に押し殺す様な嗚咽に俺は目を覚ます。
 誰が泣いているのかと辺りをキョロキョロ見回すと、隣で寝ている妹でもアキラでもアキでもなかった。
 その嗚咽の主の正体は三浦のおばさんだった。

『おばさん、どうしたの?』
『ごめんね、起こしちゃったねシゲ君』

 あれは確か夜も更けて来た静かな時刻。
 波の音と虫の()に紛れる様にして、彼女はひっそりと涙を流していた。

『なにか悲しい事、あった?』
『……あの人に、この子達の父親に、会いたい』

 いつも気丈なあの人が子供の俺に見せた涙だった。

『うちの親父とお袋は?』
『シゲ君のお父さんとお母さんは、砂浜を散歩しに行ったよ』

 寂しそうに微笑むおばさんに俺は気付く。

(あっ……。)

―――うちの両親は馬鹿だ。

 俺は別に自分の両親の事が嫌いではないが(当然名前の話は別だ)、人の気持ちを考えられない部分や、その空気の読めない部分は子供の頃からどうかと思っていた。

 近所の母子家庭の家族を誘い、毎年夏になったら海にキャンプに行く。
 子供達も喜ぶし、男手がないと中々難しいそのアウトドアに三浦のおばさんも喜ぶ。
 両親は自分達はとても良い事をしていると信じて疑わない。
 確かにそうなのかもしれない。
 しかし夫を亡くした彼女が両親揃ったうちの家族を見てどう思うか、夫婦仲睦まじい自分達を見てどう感じるか考える事が出来ない。だから夜中、三浦さんに俺達を押し付けて、二人で浜辺にデートなんかにも行くのだろう。

 俺は自分の考えなしの両親の申し訳なくなって、妹が泣いている時にする様に、ぎこちなく彼女の頭に手の平を乗せてみた。
 破顔する三浦のおばさんの頬を滑り落ちる涙に、胸が苦しくなる。

『……会いに行けないの?』
『行けないの、とっても遠い所にいるから』

 泣き笑いする俺の初恋の人の在りし日の姿と、寵妃ホナミの顔が重なった。

(そうだ、あの人の名前は、――…三浦穂波(みうらほなみ)……。)


「穂波さん!!」

ガバッ!!

 飛び起きると、全身に大量の汗をかいていた。

(って、そうか。……俺、もうあの世界にいないんだ…)

 今夜の森にいる事を思い出し慌てて口を噤むが、後の祭りだ。
 気配を殺し、辺りに獣や魔性がの類が近付く気配はないか、神経を張り巡らせる。……どうやら大丈夫そうだ。
 ほっと一息を付きながら空を見上げる。
 木々の枝葉の影から小さな月が一つ輝いているのが見えた。
 この世界には月が二つある。
 今は見えないが、平地に行くと巨大な月が半分顔を覗かせているのが昼間にも見える。

―――そう、ここは異世界だ。

(三浦のおばさんは、穂波さんは、……今どうしてるんだろう…?)

 アキラとアキはもう目を覚ましたのだろうか?
 それともあのまま眠り続けているのだろうか?

(おばさんは……今もたった一人で子供達が眼を覚ます時を祈り続けているんだろうか?)

 あの人が今、病室で月を見上げている様な気がした。

「……どうしたルーカス」

 どうやらエミリオ様を起こしてしまったらしい。
 寝ぼけ眼でこちらを見上げる主に俺は頭を下げる。

「すみません、変な夢をみてしまっただけです」
「そうか、ん……森なんだからな、あまり大きな声は出すなよ」
「すみません、気をつけます」

(なんであいつがホナミを名乗り、三浦のおばさんに化けているんだ…?)

 もう少し考えれば答えが出そうだったが、疲労が溜まっていたらしい俺はすぐに睡魔に誘われ眠りに落ちた。



―――翌朝。

「あれッスかね?」
「他に大きな建物も見付からないし、まあ、十中八九そうだろうな」

 俺達は1時間も歩かない内に、木々の合間から覗く古城を見付けた。
 池の畔にあるその古城を目指して、歩くことしばし。
 後方から聞こえる馬の蹄の音に俺は主に目配せをする。

「エミリオ様」
「ああ」

 盗賊の可能性もあるので、主と茂みの中に身を隠してやり過ごす。

「ぎゃははははは!!上玉たぜ、こりゃ親分も喜ぶわ」
「まさかこんな森の奥にこーんな別嬪さんがいるとはなぁ」
「な、俺の見間違いじゃなかっただろ?」
「たまにはお前も役に立つな」
「むー、むー、むー!!」

 その台詞や姿格好からして堅気の人間ではない。十中八九盗賊だろう。
 彼等は縄で縛り猿轡を噛ませた美少女を馬に乗せ、俺達の前を颯爽と駆け抜ける。
 馬が通り過ぎるその瞬間、見覚えがある少女の顔に俺は瞠目した。

(『白雪姫と7人の恋人』のヒロイン、白雪姫(スノーホワイト)!!)

「ルーカス、今のはなんだ」
「盗賊……じゃないッスかね?」

―――ここが乙女ゲームの中か俺の夢の中か判らないが、どうやら妖狐とのアレは、エミリオ王子とルーカスの登場イベントで合っていたらしい。

 と言う事はあのヒロインちゃんは、俺達を登場させる程度のステータスは持ち合わせているという事になる。

(どうにかしてあの子の総ステータスを確認できれば良いんだが。でもゲームの様に数字が浮んで来る事もないだろうし。)

 アミール王子とエミリオ王子が城に帰還して、妖狐を倒してハッピーエンドになるには彼女のステータスも関わってくる。ゲームでは妖狐ではなく悪の大臣だった様な気がするがそこは流石にうろ覚えだ。
 ヒロインが『白雪姫と7人の恋人』のメインストーリーのイベントを全て攻略しなければラスボスは倒せなかったはずだ。
 彼女のステータスが低くメインイベントを全てクリアしなければ、ヒロイン白雪姫(スノーホワイト)はこの森の奥にある小さな小屋で、7人の恋人達と永遠に幸せに暮らすEDとなるらしい。

 彼女はそれで良いかもしれないが、俺達は困る。

 あの妖狐を野放しには出来ない。

 もしもヒロインちゃんのステータスが低い場合、俺が一緒に上げてやりたい所だが、確か俺が上げてやれる彼女のスキルは「美貌」と「流行」だけだ。あとは「体力」コマンドの中の一つの「剣術」。
 しかし「体力」系のスキルは、俺よりもヒルデベルトと一緒にいた方が大幅に上がる。
 そして俺と一緒にいると「家政」と「気品」のスキルが下がると言うマイナス面がある。
 他の攻略キャラ達も俺同様、一緒にいれば上がるスキルと下がるスキルがあった。
 彼女の全パラメーターをバランス良く上げるには、アミール王子が一番良かった。次点でエミリオ王子。
 ただ親密度の低い初期はアミール王子と一緒に居ても、パラメーターは全く上がらない。親密度が高くなれば大幅に上がる様になるのだが、ここはやはり最難関のメインヒーローと言うべきか。彼の親密度を上げるのは至難の技なのだ。

 次点のエミリオ王子だが、彼と一緒にいると「ストレス」が溜まりやすい。
 特に登場時の親密度の低いツンツン状態のエミリオ様と一緒にいると、すぐに「ストレス」がMAXになり「休憩」をしなければならなかった。「ストレス」がMAXになるとスノーホワイトはまた「病気」になってしばらく寝込む事になる。
 更に「体力」が低くても、すぐにヒロインは「怪我」や「病気」となってしばらく寝込む事となる。

 上手くヒロインのパラメーターを上げて行かないと攻略キャラは攻略出来ないし、『白雪姫と7人の恋人』のストーリーを全て見る事は出来ない。

(なんとかヒロインのレベルを上げて、パラメーターもバランス良く上げないとな…)

 全キャラを攻略する勢いで、スキルを1つづつ上げて行くのも手だ。

 まず最初に、このゲームの攻略に必要不可欠な「体力」を上げる為にワンコ騎士ヒルデベルトと一緒に森や川で遊ぶ。ヒルデベルトと「運動」をすると「体力」だけでなく「美貌」も少しだけ上がる。恐らく体を動かす事でのダイエット効果だろう。
 その代わり奴と一緒にいると「知性」と「気品」が下がるので、その後はイルミナートの所に行き、一緒に「勉強」をして、「知性」と「気品」を上げる。そうやって他のキャラでパラメーターを調整して上げていく。
 そういうやり方もあるとアキは言っていた。

「女が捕まっていたな。見て見ぬふりも出来ん、助けに行くぞ」
「へいへい、お供しますよ王子様」 

 そしてやはりと言うか、シナリオ通りに俺達は彼女の救出に行く事になった。

(とりあえず今後の事はヒロインちゃんを助けてから考えよう)

 彼女を助ければアミール王子達とも合流出来るのだ。
 まずは彼女を助けなくては始まらない。


 盗賊達の後をつけ、向かった古城にはアミール王子達の姿はなかった。
 やはりここはただの盗賊のアジトの様だ。

「侵入者だ!!」
「なんだお前等は!?名を名乗れ!!」
「可愛い女の子の貞操の危機(ピンチ)は見逃せない!あわよくば悪者達から救出した後、彼女のハートに恋の炎をつけて、燃え上がる一夜のロマンスを期待している!俺達はそんな純粋な青少年!通りすがりの正義の使者でっす!!」
「ルーカス……」
「なんだとォ!?お前等もあの女狙いか!!」
「……やめてくれ、この下半身男と僕を一緒にしてくれるな」
「えー、それ酷くないッスかエミリオ様」

 襲い掛かる山賊達を薙倒し、城の奥へと進む。

 ゲームらしく、最上階の大きな部屋にヒロイン白雪姫(スノーホワイト)は居た。

「その少女を放せ、この薄汚いならず者達め!!」

バン!!

 勇ましくドアを開け放つエミリオ様に俺も続く。
 ヒロイン白雪姫(スノーホワイト)がならず者達に強姦されるその寸前の所に、俺達は滑り込んだ。

「浚ってきた女の子に淫蟲を使って性奴(せいど)に仕込もうだなんて。顔の悪い男達は大変だねぇ、そうでもしなければ女の子の1人も自由に出来ないなんて」
「なんだとぉ!?」

 逆上して飛び掛かってきた男達を呆気なく倒した後、台座の上で縛られていた全裸の少女の縄を解く。

「大丈夫かい、お嬢さん」
「あ…あ、うぅ、」

 少女の後孔から尾っぽの様に生えるその黒い尾は見覚えのある淫蟲の尾で、思わず俺は顔を顰めた。

(酷い事しやがる……。)

 彼女の後孔に頭から挿入されているツチノコの様な生物は淫蟲の一種だ。
 この淫蟲の出す催淫効果のある粘液を腸壁から血中へ吸収する事により、女は前に男が欲しくて欲しくて悶え狂うようになる。
 同時にこの蟲を後孔に挿れた状態の女の女性器に男根を挿入すると、後で動く蟲の感覚が肉壁越しに伝わって来て、通常の性交とは比にならない快楽を感じるらしい。
 この淫蟲は主に借金のカタに売られてきた娘を”仕事”に慣らし、雇い主と快楽に依存させて、逃げられなくする為に裏社会で使われている蟲だ。
 一応この国では違法扱いされている蟲ではあるのだが、森でこの蟲を捕まえていて夜な夜な楽しんでいる夫婦もいるとかいないとか。まあ、そこは個人の自由だろう。

 彼女には悪いが、これは一度中で男が吐精してやらなければ彼女は淫蟲の熱からも催淫効果から来る強い衝動からも解放されない。

「騎士さま……たすけ、て…」 

 縋る様に細くて白い指が俺の腕を掴む。
 その時になって俺は初めて彼女の顔を真正面から直視したのだが、まるで絵画の中から抜けだして来た様な、悪魔的に美しいその少女の姿に一瞬にして心を奪われた。
 盗賊達に捕らえられた彼女を遠目で見た時から美しい少女だとは思っていたが、間近で見た白雪姫(スノーホワイト)のその美貌は目を見張るものがあった。
 百合の花の様に楚楚とした印象の少女だが、その愛らしい顔立ちからは不釣合いな大人の女の色香が、全身から滴んばかりに溢れている。

 スノーホワイトは噂に違わず雪の様に白く美しい肌をしていた。
 処女雪の様に清らかでみずみずしいその素肌は、男に蹂躙されるのを今か今かと待ち望んでいる様に思えてしまうのは何故だろう。
 新芽のように初々しい肢体は、華奢で抱き締めれば簡単に折れてしまいそうだが、男ならば誰もが彼女の事を力の限り抱き締めたいと思ってしまうはずだ。
 その大きな瞳と目が合った瞬間、百戦錬磨を自称する俺の思考がしばし停止した。
 潤んだ瞳、上気した頬。
 甘い吐息を繰り返し吐き出している、そのチェリーのシロップ漬けの様に真っ赤な唇を、人助けと言う事を忘れて、思うがままに貪り尽くしたい衝動に駆られる。

(な、なんだこの子。やっべぇ、クッソ可愛いな、このヒロインちゃん……。)

 胸が激しく波打って膝がわななく。
 下腹の辺りからジリジリと込み上げて来る熱は、恐らく性衝動だけではなかった。
 俺は今、目の前の美しい少女に、思春期のようなガキの様なトキメキを覚えている。

―――この胸の高鳴りは、もう抑えられそうにない。

「る、ルーカス!何を考えているんだ!!」

 舌打ちしながらズボンのベルトを外すとエミリオ様が驚愕の声を上げる。

「これは淫蟲です、中で吐精しなければこの子は快楽で悶え狂い死んでしまう!!」
「し、しかし、初対面の女性に、そんな事を……!!」

 真っ赤になって喚く主に俺は溜息を付いた。

「女性とお付き合いした経験のないオコチャマのエミリオ様には刺激が強過ぎますもんね。いいですよ、俺が彼女をお助けしますから、王子は1時間くらいそこいらを散歩でもして来てください」
「な、なんだとォっ!?――……ぼ、僕にだってそのくらいっ!!」

 エミリオ様はいつになく乱暴に上着を脱ぎ捨てる。
 彼は肩を怒らせながらカツカツと軍靴を鳴らして俺達の前まで来ると、フンと鼻を鳴らして台座の上の美少女を見下ろした。

「あなた……は…?」
「僕の名前はエミリオ・バイエ・バシュラール・テニエ・フォン・リゲルブルク。リゲルブルクの第二王子だ」
「え……?」
「フン。……女、お前は自分の幸運に感謝する事だ。本来ならば僕の様な高貴な者に抱いて貰える機会なんぞ、なかなか恵まれないのだから。――…ほら、さっさと脚を開け、抱いてやる」
「きゃぅ!ま、待、…………ッあ、あ、あぁあああああっ!!」


―――そして俺達は、シナリオ通りに彼女に恋をする。

次話からアキラ君による、スノーホワイトちゃんのエロ実況中継に戻ります。
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Siti Dara

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