1・逃げたいですよね!獣姦です!!
今日、俺は一体どこで何を間違えてしまったのだろうか?
偶然見付けた泉で水浴びしようと思ったのが間違いだったのだろう。いや、今日あの小屋を飛び出した事自体が間違っていたのかもしれない。
しかしそうは言ってもここは不便な中世の世界なのだ。文明の利器で溢れ返った現代日本と違い、追い炊きボタン一つで温かい風呂に入る事すらままならない。
王子達と暮らしていたあのログハウスで風呂に入る事となると、必然的に外で薪を焚きながらドラム缶風呂に入る事になる。
すると「私の姫 の美しい肌が火傷でもしてしまった一大事だ、私が薪の様子を見よう」とか何とかそれっぽい事を真顔で言いながらやってきた男が、薪を口実に入浴中のスノーホワイトの裸体を視姦しはじめ、「ああ、寒い。風邪引いてしまいそうだ、どうか私も湯につからせておくれ」と言いドラム缶の中にまで入って来て、最終的にスノーホワイトの中にまで入って来ると言うのが常であった。
天気が良い日、ログハウスの近くにある川で水浴びするとしても、気がついた時には誰かしらの何かしら棒 を突っ込まれているのが日常であった。
そういう訳でここ最近、一人でのんびりと風呂に入る機会に恵まれなかった俺が、偶然見付けた綺麗な泉を見て、水浴びしたいと思ったのがそんなにいけない事だったのだろうか?
今日は陽気も良かった。
こんな森の奥だし、野生の動物に覗かれる事はあっても人に覗かれる事もないだろう。
そう高を括り水浴びをしていたら、なんと泉の畔に白い野馬達が集まって来た。
(ん……?)
その野馬達は馬にしては大分小さい。
ポニーだろうか?と思ったが、良く良く見てみるとポニーよりも一回り小さい。
スノーホワイトちゃんの潤艶ストレートヘアーをゴシゴシ洗っていた俺は、顔を上げて陸の方を振り返り、――…そして、感動した。
獅子の尾に牡山羊の顎鬚、風に波打つ毛並みは、目に沁みるほど白くて美しい。二つに割れた蹄、額の中央から真っ直ぐに天を指す様に生える立派な角。
彼等は野馬ではなかった。
―――伝説の生物、一角獣 の群れだった。
「すごい…、本物だ」
スノーホワイトの唇から感嘆の声が漏れる。
この世界でも一角獣は伝承の生物と言われている、現存しているのか不確かな魔法生物だった。
まさかスノーホワイトが幼少時代に読んだおとぎ話の中の生物が実在していた事に、俺は驚きを隠せない。
(王侯貴族のハイスペックイケメンエリート達だけではなく、幻の魔法生物まで呼び寄せちゃうなんて、流石最強美少女プリンセス白雪姫 ちゃん18歳の裸!!)
―――って、一角獣 ?
全身から血の気がスーッと引いて行く。
(やべぇ…)
これはアレだ。
噂の巨根猟師の登場の前座イベントの一角獣の角攻めとか言うアレである。
(どうしてこうなった?あいつらの所から逃げて来たはずなのに、一体何がどうしてこうなった……?)
これが乙女ゲームの強制力と言う物なのだろうか?
(なんなんだこれ。どうすれば新キャラ登場とこいつらの角攻めから逃げられる!?)
―――よし。
ザバアアアアアッ!!
俺は勇ましく男らしく泉の中から立ち上がった。
服は一角獣達の方にあるので今は諦める。とりあえず逃走して、後で取りに来よう。
「男だらけの逆ハーレムなんて、完成させてたまるかあああああああああああっ!!!!」
奴等がいない方向の岸へと俺は全裸のまま走り出した。
―――しかし、
ドン、
俺は目の前に突如現れた毛むくじゃらの何かに頭から突っ込み、草の上に尻餅を付く。
(げっ…。)
スノーホワイトの目の前に現れたのは、煉獄の炎の如く燃え盛る長い赤毛を持つ美しい青年だった。
一瞬まさかコイツが新キャラか!と思ったが、それは違う事にすぐに気付く。
何故ならば、目の前の男は人ではなかったからだ。
馬の首から上に、人間の男の上半身を据え置いた様な姿のその生き物の名前は、――ケンタウロス。
「俗世の穢れを身にまといし人間の娘よ。よくもミュルクヴィズの不可侵領域、闇の泉イボバビアを侵してくれたな」
本日ニ種類目の稀少生物の登場に、俺は引き攣り笑いを浮かべた。
(ドライアドに森の主にユニコーンにケンタウロスに、スノーホワイトちゃんのめぐり合わせって一体どうなってんの……。)
名探偵が外に出掛ける度に殺人事件に出くわす様な、幻の生物達とのエンカウント率に開いた口が塞がらない。これは白雪姫 ちゃんのヒロインパワーのなせる技なのか。
しかしそんな伝説の生物やら稀少生物に巡り会う幸運に恵まれていたとしても、俺は今、全く嬉しくなかった。
何故ならばケンタウロスも一角獣達も、決して友好的な様子ではないからだ。
酷く興奮している様子の怒れる一角獣の群れは、鼻息荒く、前足で地面を掻くようにしながら、俺の周りに集まって来た。
「えと、その、えっ、あ、う……、」
ジリジリと追い詰められ、背中がドンと何かにぶち当たる。
俺の背後にはクライマーが見たら大層喜ぶであろう、それはそれは高い崖が聳え立っていた。
パラパラと小石が降ってくるその急斜面を見上げ、俺は絶望する。
この崖を非力なスノーホワイトの体(しかも全裸)で登るのはどう考えても不可能だ。
(絶体絶命……?)
スノーホワイトの顔が蒼くなって行くのを感じながら、俺は引き攣った笑みを口元に浮かべた。
すみません、話タイトルはこの章が完結したらてけとーにつけます。
本日夜、もう1話投稿出来る…はず。
0 komentar:
Posting Komentar