【閑話】嘘つき男と城の魔女 後編
アキがリディアンネルに転生して良かったとつくづく思うのは、もしかしたら食事の時間かもしれない。
王妃と言う立場上、この国で一番質が良く鮮度の良い物が毎食アキの前に並ぶ。
勿論それを調理する料理人の腕もこの国一番の物で、その部屋に合わせたテーブルコーディネートも、食材の持ち味を殺さずに生かす食器選びや盛り付けも神掛かりだ。
特にこの城のシェフのテリーヌは素晴らしい。
季節柄この城の近辺でとれたとれたての野菜を使う事が多いのだが、様々な彩りの野菜を詰め込み、オクラやヤングコーン等切り口が可愛らしい仕上がりになる野菜を使ってこれまた上手い具合にカットして出してくる事もあれば、小鴨のテリーヌに前衛的なタッチの天才画家の様に赤ワインソースをかけて出して来る事もある。そんな料理人の腕にアキは毎回毎回関心している。
次に素晴らしいのは食後のデザートだろうか。
リディアンネルが愛用しているルビーの指輪を模った指輪が台座の上に置かれたデザインのケーキや、リディアンネルの子飼いのカラスを見事に再現したチョコレートケーキ。小腹が空いた時に頼んだカップケーキからクッキーに至るまで手が込んでいてて、食べるのが勿体無いといつも思う。
前世はあまり食にこだわりのない人間だったが、最近は食事の時間になると幸せを噛み締める事が多い。
とは言っても記憶が戻る前のリディアンネルは、こんな豪華で手の込んだ食事でも何度も作り直しを命じては調理場の者達を泣かせて来たのだが…。
どちらにせよ前世はお茶漬けとたくわん、もしくは白米とふりかけがあればそれで満足していたアキからすれば胸焼けする位豪華な食生活だ。
「美味しいですか?」
「うん」
アキの目の前の使い魔は、もぐもぐと朝食を口に運ぶアキをとても幸せそうな顔で眺めている。
(なんでこの人は、私の世話をしているだけでこんなに嬉しそうな顔するんだろうな…。)
便利な鏡を手に入れてから、ろくに飲食も睡眠も取らず風呂にも入ろうとしない駄目な人間のアキの世話を甲斐甲斐しく焼いている使い魔は、何故か毎日とても楽しそうだ。
何かに熱中するとその事以外無頓着になるのは、アキの前世からの習性の様な物だった。
そして最近、ほとんど鏡の中に戻らなくなったこの男は燕尾服なんぞを着こんで執事となり、アキの身の回りの世話やら王妃の補佐までする様になった。
スノーホワイト達の覗き――…ではなく、監視と言う重大な使命がある以上、アキはこの使い魔に非常に助けられている。この男、何気に有能で仕事も出来る。
以前はリディアンネルに命じた命令を聞くのも渋々と言った様子であった癖に、この変わりようと来たら一体何なのか。
あまりにも使えるので、最近はリディアンネルに化けさせて王妃のフリまでさせている事もある。
(やっぱ燕尾服いいなあ)
朝陽を受けて輝く白銀の美形執事の顔を、アキはそっと盗み見する。
上質な拝絹地のピークドラペルに、流れる様な美しいVゾーンの胸元、シャープなウエストラインの燕尾服は、この使い魔にとても良く似合っていた。彼が颯爽と城を歩けば、振り返るのはアキだけでない。城のメイド達も彼の艶美なその姿に目をハートにして彼の姿を追う。
前世「城執事」と言う漫画に出て来る城勤めの執事、セバスティアーノ萌えだったアキは、使い魔の燕尾服姿に不覚にもときめいてしまい、先日「わ、私の事をプリンセスシエスタって呼んでくれない…?」と言ってみたのだが、かなり引いた様子で「は?」と言われて終わった。
いつか使い魔に「城執事」のセバスのコスをして欲しいと思いつつ、アキは飽きもせずに毎日スノーホワイト達を見守っている。
最近、秘め事の最中、限界が来ると素に戻る事がある弟の様子が面白かった。
昨晩も「まだ終わんねぇのかよ!さっさとイケええええええっ!!」と絶叫する弟に、思わず吹き出してしまった。
『白雪姫と7人の恋人』をプレイしていた時は複数プレイに憧れを抱いたりもしたが、実際弟がやっているのを見ると複数で交合うのは、……うん、なんて言うか、とても大変そうだ。特に女が1で男が複数の場合、夢と現実は違うんだなとしみじみ思った。
事後、疲れ果てて死んだ様に眠る弟スノーホワイトを見ながら「私は一生しなくていいかな…する機会もないだろうけど」と思うアキだった。
「お味の方はどうでしょう?」
「とっても美味しいです。特に今朝のポタージュはポタージュ、優しい味がして好きだわ」
何気なく言ったアキの言葉に、何故か使い魔の動きが止まる。
開眼した糸目の使い魔は、柔らかく目を細めた後「私もです」と頷く。
少しそのパーシャンローズの瞳が潤んで見えるのは、アキの気のせいだろうか?
「そう言えば。何であなたまだ鏡の中に戻らないの?」
「……アキ様って、たまに残酷な事言いますね…」
「は?」
一変して不貞腐れた顔となった使い魔のその恨みがましい視線に、アキは首を傾げる。
つい先日までずっと鏡の中に居て外になど出てこない男だったので、元々そういう生物だと思っていたのだが、この様子を見るにもしかしたら違うのかもしれない。
「私は少しでもアキ様の近くにいたいんですよ」
「そ、そう…?」
頷いて返しつつも、美形と美形の甘い言葉に慣れていないアキは困惑していた。
日常的にこんな甘い言葉を吐く使い魔にときめきを覚えつつも、この男もどうせ男なのだし、一人になったらアキラ君みたいな馬鹿や変態オナニーをしてるに違いないと思う事で頬の熱を冷ましていた。
(いや、でも実際妖魔って性欲あるのかな?……いや、でもセックスは出来るし、それにもっと私としたいみたいだし)
先日の事を思い出したアキの頬がまた赤く染まる。
「アキ様は私の事はお嫌いですか?」
しょぼんと八の字に眉を下げながらこちらにズイッと顔を寄せる使い魔に、アキは咳払いをして誤魔化した。
「嫌いではないけど……私、前世 から三次元の男はどうも苦手で」
「三次元?」
「三次元じゃ通じないか、……えっと、リアル…も通じないか?私、現実の生身の男が苦手なんだ」
「しかしあんなゲームをやり込んでいたくらいです、アキ様も男が嫌いと言う訳ではないのでしょう?」
「二次元は別なのよ、二次元は」
憂鬱そうに右手に持つスプーンの腹に映った自分リディアンネルの顔を眺めながら彼女は嘆息する。
リディアンネルのこの美貌や魔力さえあれば、別に現実の男を恐れる事などないだろう。
前世はコンビニ前にたむろしているDQNや、言動が乱暴で粗野なクラスの男子が苦手だったし時に恐怖も覚えたが、今の自分は三浦亜妃ではない。
リディアンネルは裏路地にいるゴロツキや盗賊程度なら、蝿を追い払う様に軽くあしらえる程度の魔力を持ってる魔女だ。
このきつめな容貌と言い、今までの気性の荒いキャラクターからしても、リディアンネルは老若男女男女問わず恐れられる側の女であった。――…と言うか、現実問題今も国中の人間に恐れられている。
そしてこの美貌とナイスバディーを使って落とせない男などこの世にはいないのではないかとすら思えた。今リィデアンネルが身につけている衣装も装飾品も王妃ならではの物だ。
前世はアキの服装や髪型、持ち物に一々ケチをつけてくる男子もいたが、今の自分の容姿や持ち物を馬鹿にしてくる人間なんてこの国にはまずいないだろう。 つい先日まで着込んでいたいかにも意地悪な継母!悪役の魔女!と言った酷いセンスの服装について言及してきた者も、そういえば全くいなかった。……まあ、そんな事をリディアンネルに言いでもしたら、死刑にされると誰もが思っている。
そう言った理由で今のアキが普通の人間の男を恐れる理由はないと言えばないのだが、男を嫌悪する理由や愛せない理由ならある。
「二次元の男と三次元の男、どう違うんですか?」
使い魔に言われアキは真剣に考えた。
恐れ云々以前に、前世弟を含め、現実 の男には幻滅する事が多かった。「少女漫画に出て来る王子様なんてこの世にいないんだ…。」と小学生の頃には既に悟っていた様な気がする。
小学生になっても時折うんこを漏らしている弟が家にいると、やはり異性に希望もときめきも持てなくなる。
現実の男は靴下は臭いし部屋も臭い。
臭い靴下を嫌がらせのようにこたつの中や、アキの部屋に脱いで置いて行く。トイレの便座は下げずに使って床をビショビショにする。なので座って済ませろと言っても妙な男のこだわりがあるらしく座って済ませてくれない。かと言ってトイレ掃除もしない。
テレビを見ながら尻は搔くわオナラはするわ、暇さえあればオナニーばっかりしてる。いつもエッチな事ばかり考えて勃起してる。何だか無駄な毛もぼーぼー生えてるし、言わなくて良い事ばかり口にする。たまに歯磨きを忘れて寝る事もある。……まあ、これは全部アキの前世弟の事なのだが。
弟が湯船を使った後、風呂に入ろうとすれば変な毛や白いゼリーの様な物が浴槽を漂っていたりするし、……そんな弟のせいで、アキの中では「男=不潔」「男=変態・エロ」の方程式が出来上がっていた。
しかし二次元のキャラ達は違う。
皆キラキラしているし無駄毛もない。
おならもしなければうんこもしない。当然うんこも漏らさない。
学校の男子の様にちんこうんこまんこ言うのもいない。――…アキのときめきも夢も壊さない。
二次元の男は清潔感があってエッチじゃない。
いや、エッチでも二次元は二次元と言うだけでなんか素敵に見えるし、萌えた。リアルと違って、二次元の男がエロで萎える事はない。
これはアキが好き好んでやっていた乙女ゲームが異世界モノが多かったせいもあるのだろうが、エロ本やAVを見る男 なんてまずいなかった。
ゲームのキャラによっては娼館通いしていた男 や、元男娼の男ヒーローもいたが、二次元ではそれも何故か魅力的に思えた。
前世の価値観で考えれば風俗通いしてる男も、過去カマを掘られていた男も絶対無理だと思うのに、不思議な話だと思うが。
『白雪姫と7人の恋人達』の攻略キャラ達は、ゲーム初期、白雪姫 のステータスが低いと結構ボロクソに言って来るのだが、そのリアルさがまた良かった。
現実のDQN男よりもDQNな攻略キャラ達をデレさせるのに燃えたものだ。
18禁版も親密度を上げるまで、攻略キャラ達はセックス時以外は鬼の様に冷たいと言う設定らしい。そんな初期設定にも痺れた。
7人の恋人達は、全年齢版も気に入らない服を着て行くとデートもせずに帰り、デート中も選択肢を間違えるデートを中断して帰ってしまう。
その攻略キャラ達の酷さに脱落する乙女ゲーマーも多かったと言う話だが、アキはむしろそれに燃えた。
「絶対にコイツ等全員落としてやる!!」と燃えに燃えまくった。
最難関のメインヒーロー、アミール王子のTrue Endまで初めて辿りついた時は嬉し泣きをした。1時間くらい感動で涙が止まらなかった。画面が涙で見えなかった。
最初は氷の様に冷くて、イジメと言っても過言ではない暴言をヒロインに吐いていたキャラクター達がデレはじめる過程に胸の高鳴りを覚えた。
『白雪姫と7人の恋人』をプレイしてからは、ストレス耐性の低い最近のお子様仕様に作られた、最初からヒロインに優しい乙女ゲーの攻略キャラ達では物足りなさしか感じなくなった。
むしろ出会ったばかりのヒロインに、最初からデレデレしている攻略キャラ達に嫌悪感を感じた。
しかし前世萌えに萌えた7人の恋人達は、今、三次元の生身の男になっている。
もしかしたらアキ自身が二次元の住人になってしまったと言う可能性も捨てきれないが、それでも今のアキにとってこの世界は現実 で三次元だ。
鏡に映る彼等は美形のままだったが、生身の男だった。
そんな彼等を観察して早い物で1ヶ月が過ぎた。
「とりあえず私で慣れましょうよ」
にこやかに言う執事に、ベネディクトの上に乗っていた卵の黄身をつついていたアキの手が止まった。
白い皿の上に拡がって行く黄身に、早く黄身を掬いたいなと思いながら執事に目線を移す。
「アキ様の為に頑張りますから」
「……頑張るって、何を?」
「色々と」
「色々って何さ」
「生身の男に慣れるには、生身の男と直接触れ合うのが効果的だと思いませんか?」
「……つまり?」
「私と沢山エッチしましょう」
「……馬鹿じゃないの、あんた」
「あれ?ご存知ないですか、アキ様。どの様な偉人賢人でも、誰もが皆恋をすると愚かになってしまうものなのですよ」
はあ、と呆れた様に溜息をつきながら、卵の黄身をサーモンに塗りつける作業に戻るアキの頬は微かに赤かった。
男慣れしていないアキは、この男の率直な愛の言葉にどう反応して良いのか分からない。
乙女ゲームの様に3択出てくれば余裕なのにと思うが、残念ながらスノーホワイトの方と違い、リデアィンネルの方に選択肢は出てこないようだ。
あれから何度かこの男と関係を持った。
スノーホワイトの濡れ場を見てきゃーきゃー言っていたある日、いきなり押し倒されたのだ。
『ふぅん、そんなにあの男に抱かれたいんですか?』
『なに言って…、』
彼が忌々しそうに睨むのは、鏡の中のスノーホワイトをよがらせているアミール王子だ。
『せっかくだし、彼等と同じ事でもやってみましょうか?』
『へっ?』
鏡は7人の恋人達に嫉妬している事を隠さない。
そんな使い魔に対して、アキの中に不思議な感情が芽生えつつある。
『そんなに良いですかねぇ、私の方がずっと良くないですか?』
『また鏡ばかり見て。今度は誰です?……イルミ様ねぇ、私も明日は眼鏡でもかけてみますかね』
『今日はエルヴァミトーレか、……女装は、流石に私には厳しいですよねぇ、うーん』
直接好きだと言われた事はないが、彼の”嫉妬”と言う、そのとても分かりやすい感情から結びつく物は――…1つしかない様に思えた。
(でもそんなの困るよ、私、今までろくに男の人と付き合った事なんてないのに。しかも相手は人間ですらないし。どうすればいいんだろう…?)
しかし今までの人生、異性に、しかもこんな美形に好意を寄せられた事のなかったアキは、彼のその率直なアプローチに戸惑っていた。
戸惑っても恥ずかしがっても、既にやる事はやっているので今更と言う感じもするのだが、それに気付いてしまったら最後、どうやってこの使い魔と接すれば良いのか解からなくなりそうなのでアキは気付かないふりを続けている。
「ところで、スノーホワイト達はこれからどうなるんですか?」
「え…、ああ」
アキはティーカップを置いて、咳払いした。
「アキラ君は相変らず順調にスーパー逆ハーレム重婚EDへと爆走してる。……もしかしてアキラ君って、乙女ゲームの才能があるのかも…?」
「え、順調なんですか?弟さん家出してたじゃないですか」
「これはどのルートに行っても必ず発生する必須イベントなのよ、順調に物語が進んでる証拠なんだ。恋人達の愛が重すぎて、スノーホワイトは家出するの」
「……で、どうなるんですかこれ」
「好感度が突出して高いキャラがいる場合、そのキャラがヒロインを迎えに行く。それで仲直りイベントが発生して、スチルがゲット出来る」
「スチル、……確か、ゲーム内に出て来る1枚絵の画像ですね?」
アキに付き合わされている使い魔も、異世界の乙女ゲーム用語に随分詳しくなった。
そんな優秀な使い魔に満足そうに頷きながらアキは続ける。
「ええ。ちなみに18禁の方はそこで青姦になるらしいわ。18禁でもそこでスチルは1枚ゲット出来るみたい」
「……また青姦ですか……なんか、こう言っちゃ何ですが、本当セックスしかしてないですね、あの人達」
「仕方ないよ、18禁乙女ゲームだもん」
「はあ…?」
「そういう訳で、このイベントが発生する事によって、プレイヤーは誰のルートに入ったか、誰の親密度が一番高くなっているのか分かるのよ」
「ふむ。で、それがお目当てのキャラでなかった場合はリセットすれば良いと言う事ですね?」
「そう。『白雪姫と7人の恋人』は元々攻略キャラの親密度が表示されないゲームなの、だからここに来るまで誰の親密度が一番高いかプレイヤーには分からない」
「はあ…?」
「でもアキラ君は皆平等に好感度を上げてるんだわ」
「その場合どうなるんです?」
「その場合、……ふふふふふ、うふ、うふふ…」
使い魔の質問に、アキは俯くと肩を震わせ不気味に笑う。
「あ、アキ様…?」
主人のその尋常ではない様子に使い魔がうろたえていると、アキはガタン!と派手な音を立てて椅子を立ち上がった。
「新キャラ登場よ!!」
「は、はあ…?」
もう食事は終わったらしい。
そのままベッドの上に飛び乗る主人に、彼は呆気に取られる。
「あなたも見覚えがあるはずよ!!私の夫!!夫!!あふぅううううう、あ、ああ……メル、メルぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああっ!!ふああっぁぁああ…あああ…あっあぁああああああああ!!あぁぁあああんんっ!!メルヒ、メルヒ!!私よアキよ結婚して!!メルちゃん、メル、メルぅぅうううう~っ!!!!」
「メルヒ……もしやあの猟師ですか?」
ベッドの上で身もだえ転げ回る主人に、露骨に嫌そうな顔をしながら鏡は言う。
「そう、メルはある意味隠れキャラなの!!」
「隠れキャラ?」
「OPの段階で恋人を7人全員出して肉便器ルートに行くのなら簡単に出せるんだけど、True EDの場合メルは登場させるのが凄い難しいキャラなんだ!でも今のアキラ君なら、きっと私の夫……ごほん、メルヒに会えると思う」
糸目の妖魔が開眼しているのに気付き、アキは言葉を訂正した。
(いや、でもメルちゃんは私の夫だし。何回も結婚してるし。そもそもなんで私がこんなにこいつに気を使わなきゃなんないの…?)
メルヒはアキの心の中の夫だ。
イルミ様は旦那でアミー様は王子様。ルーカスは彼氏だけどメルちゃんは夫なのだ。
でもこの違いを話しても鏡は全く理解してはくれない。
(乙女ゲーマーのネッ友達は皆分かってくれたんだけどな…。)
その友人達が特殊だと言う事に気付かないアキは、前世の友人達に思いを馳せながら天井を仰いだ。
(そう言えば今、元の世界ってどうなってるんだろう?こっちの世界と向こうの時間の流れって同じなのかな。お母さんももう生きてないのかな)
鏡にお願いすれば見せてくれそうな気もするが、見るのが怖い様な気もする。
今度覚悟を決めてからお願いしよう。
アキがベッドの背もたれにセットした鏡の中に視線を戻すと、怒れる一角獣に囲まれ震えるスノーホワイトが映っている。
しかし惜しい。
青ざめ怯える姿も可愛いらしいこのヒロインちゃんの中身がアキラ君だなんて。
―――新キャラ登場前座の必須イベントは、もう既に始まっていた。
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