4・おっきいですよね!巨根野郎!!
「避妊具は?」と至極まともな事を聞かれ、一粒で一ヶ月持続する避妊薬を飲んでいると答えると彼は納得したらしい。
―――それからは早かった。
無言になった猟師に泉から抱き上げられて、近くの木陰で押し倒された。
「姫様、ずっとお慕いしておりました…」
俺が何かを言おうとする前に、目を細めたメルヒにそのまま唇を奪われる。
唇を塞がれた俺の手は自然と男の頭へと伸びた。
何とはなしにモスグレーの珍しい色の髪を撫でてみると、少し伸びたその短髪はとても手触りが良かった。
言うなれば野球男児のスポーツ刈り。坊主頭から髪が数cm伸びた小学生の頭。あの触り心地に近い。
『えー、なんでサッカー部なん?俺と一緒に野球部入ろうぜ』
『うるせーな、俺の中では今サッカーがアツイんだよ』
『なんでだよー、お前ずっと野球好きだったじゃん。なんで?いつからサッカー好きになったの?』
『シゲには関係ないだろ、野球部に入りたかったら一人で入れよ』
『アキラがいない野球部なんて絶対つまんねーし、入る意味なんかねぇよ』
『じゃあシゲも俺とサッカーするか?』
『うん、する』
『そ、そっか…』
『……へへっ』
『な、なんだよ?』
・・・・・。
(嫌な奴の事、思い出した…。)
メルヒの頭の撫で回している俺の手の動きが止まった。
―――萎えた…。
しかしそんな事を考えている間にも、くちゅりと唇を舐められて、口の中に舌を捻じ込まれる。
獣のように激しく唇を貪られ、舌を深く絡ませられ、口内を犯されていく。
口内を犯す舌の動きにどうやら頭までもが犯されてしまった様で、すぐにまともな思考は働かなくなった。
体を突き動かす本能に身を委ね、男の舌に自ら舌を絡ませる。
絡め取られた舌を向こうの口腔内に思い切り吸われた瞬間、達しかけた自分の体に思わず苦笑いした。
(あつ、い……)
岩の様に硬く熱を持った肉がスノーホワイトの下腹部に当たっていた。
それに気付いた瞬間、目が潤む。
その熱は触れた場所から伝染するようにしてスノーホワイトの体に拡散されて行く。
もう耐えようがないくらいに、ジンジンと下腹の辺りが疼いていた。
(やばい…きもちいい……。)
秘裂に伸びる指にメルヒのしようとしている事を察し、その手を押さえる。
「そんなのいいから、早くちょうだい……?」
前戯なんてまどろっこしい物なんかなくていい。早く欲しい。
もう待つ事なんて出来なかった。
スノーホワイトのその言葉に、男の琥珀色の瞳から戸惑いの色が消えた。
彼はいささか乱暴にスノーホワイトの両の膝裏を掴むと、足を持ち上げる。
どろどろに蕩けたその部分に、弓なりに怒気をみなぎらせた灼けるように熱いものの先端を押し当てられた瞬間、期待で胸が震え、目が眩んだ。
「っ!――…ぅあ゛ぁ…ッ!…あ、あ、ああああああああああ!!」
スノーホワイトの真っ白の内股の中心にある剥き出しの割れ目に、あらわにのぞく一条の亀裂に、男のかぐろい毛叢の間から屹立した肉塊がメリメリと音を立てながら埋め込まれて行く。
スノーホワイトの花開いた肉は泉の中で散々ほぐされてはいたのだが、やはりこのサイズとなるとそう簡単には収まりきらないらしい。
ハッハと短く呼吸を繰り返しながらチラリと下腹の方を確認すると、男の凶悪な頭部は未だその先端すら埋まっていない様子であった。
「っ……は、」
苦しげに眉を寄せる大男の姿に、コイツもこんな艶やかな顔をする事もあるんだな、と少しばかり関心する。
メルヒは毎日森で狩りをして、リンゲインの城の住人達の食事となる獲物を獲って来る城の住み込みの使用人の一人だった。
銃の腕が良いので城の警備に回り、侵入者があれば影ながら始末する事もある。
しかしそんなリンゲイン独立共和国は貧しい小国であり、侵略する旨味もない。
隣の大国リゲルブルクにおんぶに抱っこをされている状態なので、諸外国の脅威もなく、たまに血気盛んな蛮族に押し寄せられる事がある位であった。
国全体が貧しいのでごく稀に内紛の火種が付く事があっても、厳冬地帯故に冬が来れば自然消滅してしまう様な有様で、常に平和な国であったと言っても良い。
なのでメルヒは狩りから帰れば、城の裏で薪を割っている事が多かった。
無口だが面倒見が良く子供好きな彼は、森で珍しい木の実を見つければスノーホワイトの為に拾ってきてくれたし、一緒に怪我をした小鳥やリスの手当てをして自然に帰した事もあった。
彼はスノーホワイトが本当の父の代わりに父性を感じていた男だった。
―――あのメルヒに今、組み伏せられている。
なんだろう、ウニコーンの唾液だけだとは言い切れないこの興奮。謎の背徳感。
「やっぱり……入らない、ですか?」
「力を抜いて、ください」
不安気に顔を見上げれば、任せろとても言う様な顔で頷かれる。
スノーホワイトの頬を擽る男の吐息には、発散出来ずにいる彼の熱気が滲み出ている様だった。
いつになく興奮している男の素顔に、自分は今とてつもなく珍しい物を見ている様な気がして仕方ない。
「っく、あ、は、はあ、ッッ―――!」
次の瞬間、また男の猛々しいものがメリメリと肉壁を広げ、スノーホワイトの華奢な体の内に押し入って来た。
巨大なモノで体を抉じ開けられ、押し広げられて行く痛みと衝撃で喉が引き攣る。
硬く太く大きく反り返った男の肉にぎちぎちと中を抉じ開けられて行く。
男の赤黒い物の穂先がスノーホワイトの中の弱い部分をズルリと擦った瞬間、意識が吹き飛んだ。
「は、あ…………っん、は、あ、あぁ…、」
(こわ…い……っ!!)
涙をボロボロ零しながら、震える手でやおら広い男の胸板を押し返す。
大きく広げられている脚を閉じようとわななく体で上体を起こして身を捩ろうとするが、そんなささやかな抵抗も虚しく、男は自分の腰をスノーホワイトの太腿のあわいに割り込ませるようにして、奥へ、更に奥へと腰を打ち進めて行く。
「ひ…ッ!?あっ、あ!…や、やだ!…………まだ…っ、やああぁ…ッ!」
「力、抜いて……、ください」
「やっ、む…りィ……っ!!」
俺は全力で首を横に振った。
メルヒはスノーホワイトの喉から漏れる、涙ながらの苦鳴を飲み込む様に唇を奪う。
口腔内に侵入した舌を受け入れながら考えた。
(やっぱりこんな大きいもん挿れようした事自体間違ってた……!!)
「んっ……あっ、ああ……っ!!」
体が縦に真っ二つに裂けてしまいそうだ。
自然と背骨が海老反りになり、喉が仰け反って重なった唇が外れた。
背筋から脳髄まで電気の様にビリビリと走った何かを体の内から逃がすように、浅く短く呼吸を繰り返す。
「もう少しで、全部入ります」
「あくっ……ッう!…………深……いっ!」
(まだ全部入ってないのかよ!!)
俺は顎を仰け反らせたまま、歯を食いしばった。
どう考えても明らかに限界を超えている男の肉の圧迫感と、中で脈動する雄の違和感に息が出来ない。
「いき、ますよ…」
「や!やだぁ、ひ、いっ、あ……ッあああああああああああっ!!?」
ぐっと力を込めて再度膝を持ち上げられる。
子宮口にみっちりと密着させた男の塊で、最奥から更に奥へ。内臓を上に突き上げる様に深く、尚深く、ぐりぐりと凶悪な肉柱を押し込まれ、生理的な涙がボロボロと溢れた。
(こわ……い……っ!やっぱりこんなのムリ!!)
俺は初めてセックスで恐怖、――…いや、命の危機を感じた。
一本の鋭い槍で内股のあわいから喉を目掛けて胴体を貫かれ、口から槍の先端が今にも飛び出してきそうな、そんな錯覚すら覚えた。
「いやぁ……!メルヒ、やっぱり私、怖い……っ!!」
「今更、何を」
「死ぬ!死ぬ!……ッたし、死んじゃ、う……っ!!」
涙ながらに訴えるが、男はうむと誇らしそうな顔をして頷く。
「光栄、です。お褒めの言葉と受け取っておきます」
違う。待て。ちょっと待ってくれ。
褒めてない。褒めてないってば!
だからお前のはデカ過ぎるんだって!この巨根野郎!!
「ち、違!――――…ひッ、あ、う、あ、ッああああぁ、い、や!イヤあああああ!!」
目玉の裏側、――…いや、恐らく脳ミソの中で白い何かがバチバチと弾け飛んだ。
スノーホワイトのあらぬ部分を突き上げる男の鮮烈な熱に、自分を抱き締める男の太い腕の灼けるような熱さに、もしや脳髄まで灼かれてしまったのだろうか。
内臓が突き上げられて行く感覚に身体がビクビク痙攣した。
はやる鼓動と合わせる様にして、呼吸もどんどん浅く、短くなって行く。――その時、
じゅぶぶ……!
にゅち…っ、
何故かいきなりメルヒは腰を引き、熱を入口近くまで引き抜いた。
(……え…?)
凶悪な頭部の傘の部分に粘膜を激しく擦られ、中のひだを荒々しく掻き乱されて大きな声が上がる。
「っ!?―――あ!あ、んッ、んん……!あ、あっあああっ!」
喉から漏れた苦鳴は、自分でも信じられない事に甘い悲鳴に代わって行った。
スノーホワイトが感じはじめてきた事が向こうにも伝わったらしく、男は無言で微笑みながら一つ頷くと、しばらく浅い場所で軽い抽挿を繰り返す。
浅い部分の抜き挿しと言うなかれ。女体にはGスポットと呼ばれる物がある。
男が腰を引くとお化け茸の傘の部分が中のひだひだを掻き回しながら、その部分を有無を言わさぬ強さで擦るのだ。
尿意に似て非なる感覚を必死で耐えるが、サラサラとした方の女の精は既にだだ漏れだったらしい。尻臀を熱いものが流れ落ちる。
ぐちゅぐちゅと言う浅ましい水音は、気が付いた時には泉の中に居た時と変わらぬ位大きな物になっていた。
「メル、ヒ!……だ、だめ! やめ、て……っ!!」
羞恥の極みに追い込まれ、さっきから何度もやめる様に頼んでいるのだが、何故かスノーホワイトちゃんに従順なはずの男はやめてはくれない。
「駄目、ですか?」
「……っ!……ん、うん!だめ、だめなのっ!!」
涙を零しながら駄目だと訴えると、男は「分かった」と言った顔で頷いた。
真面目な顔で頷いておいた癖に、メルヒはその後も何度も何度も浅い場所での抜き挿しを繰り返した。――表情の乏しい男の口元には、さっきからずっと笑みの様な物すら浮かんでいる。
(な、なんで……?)
嗚咽を漏らしながら何故メルヒがこんな意地悪を自分にするのだろう?と考えて、ふといつものパターンを思い出した。
(――――ああ、そうか…。こいつも本気で俺が嫌がってるって思ってないんだ…。)
簡単に今のスノーホワイトちゃんがどんな顔をしているのか想像出来た。
そして俺は絶望する。――…この男にはスノーホワイトが自分の物で涙を流しながら悦び、よがり狂っている様にしか見えないのだろう。
「ひめさ、ま」
もっとも深い場所を貫かれ、体がわなないた。
今度は声も出なかった。
脊髄に鳥肌が立つほどの快感が体を走り抜ける。
―――痛みが、恐怖が、苦痛が。――…戸惑い、躊躇い、迷い、その全てが快感にすり変わる。
「ひあああぁ…ッ!あっ、ぁ…ああぁッ!…ンっ、い、あッ!イヤ! 死んじゃ…う……っ!!死んじゃ…んっあああァ…ッ!」
宥める様な優しい手付きで花芯に触れられるが、そんな事されたらますます気持ち良くなってしまう。
これ以上悦くなってしまったら、人格どころか精神までもが崩壊してしまいそうで怖かった。
だから俺は必死にかぶりを振りながら、花芯を指で転がす男の手首を押さえて目で訴えるが、男はしたり顔で頷くだけで指の動きを止める事はしなかった。
「メル、……ヒっ!?」
「はい」
「だめ、そこ、だめ……だってっ!!」
「はい」
はいじゃねーよボケ!!
駄目だっつってんだろ!?
「ッいや、いやだ、だめ、だめ、だめっ!馬鹿、ばかぁ……っ!!」
「たくさん感じてくださっているようで、嬉しい、です」
「ッ!……いや、いやぁ……っ!だめ、そんな、あっああ!!おかしく、なる、おかしく、なっちゃう!っ……からぁっ!!」
(やばいっ、イク……!!)
「ぁんっ!やぁあっ、ん!――……も、ッいく!……っん!イク、イク、イクッ、イ、いやっ!も…いっちゃぅぅッッ!!」
男の手首を押さえたまま、スノーホワイトの体は達してしまった。
「姫様、……お慕いしておりました、ずっと、ずっと、お慕いしておりました」
「っあ、……あ、ッああぁ、はあ、はあ、……はぅ、……ぁ…んん……ッ」
唇に甘く口付けられたが、もうスノーホワイトの体は彼の接吻に応えられる状態ではない。
「まさか……こんな夢の様な日が、訪れるなんて」
もう男が何を言っているのかも良く分からなかった。
激しい快楽により、震える体は痺れて自由がきかなかった。
荒い息と滲んだ視界の上で、男が笑った様な気がした。
体を貫いた肉杭はそのままに、メルヒは大きな手の平でスノーホワイトの頬を優しく撫でる。
メルヒはこんな時でも通常通りの顔で、しかし満足そうに息を吐きながら言う。
「全部、入りました」
俺は浅い呼吸のまま喉をごくりと鳴らし、泣き笑いした。
「ぜん、ぶ……?」
全部中に収めるまでのその過程で、一体何度イっただろう。
言われてみれば、スノーホワイトの秘肌には余すところなくぴったりと大男の腰が当たっていた。
あらぬ所にみっちりと埋めこまれた大男の熱が、どくどく脈打っている。
くろぐろと盛んな繁茂がざわりと花芯に触れた瞬間、びくりと爪先が跳ね上がった。
「はは…は…」
力なく笑うと、上の男もわずかに微笑んだ様だった。
するとたっぷりとした男の垂れ袋がたぷたぷと揺れて、後の小さな蕾に触れる。その感触が何だか妙にこそばゆくて、また笑えて来た。
どうやら裂けはしなかった様だが、確実に裂ける寸前だったと思う。
裂けなかった事への安堵の涙が零れた。
「夢のようです」
「…あ…う……?」
「姫様に悦んでいただけるよう、頑張ります」
ぬち…っ!
じゅ、じゅち、……ぐちっ、
「ひ、いっ……や!やぁ、っぅあ!あ、あああああ!?」
下男のその言葉の意味を理解する前に、凶器をずるりと先端まで引き抜かれ、再度最奥まで貫かれる。
霞んだ世界でパチパチと情火と忘我の白い花火が散った。
「悦いですか?」
「お、おく、だめ!っあ!あ、や!――っだめ、やだ、やだ、やだ……!!」
縋る様に自分を犯す大男の背にしがみつき、必死にかぶりを振る。
「よろしい様で、何よりです」
「いや、それ、やだ、や、……やだぁぁっ!」
無理矢理中に捻じ込まれたサイズオーバーの凶器が、ガツガツと激しく奥を穿ちはじめた。
骨の髄まで響く猛然たる振動に、首は自然に仰け反り、目にまっさらな青が飛び込んできた。
見上げた空はどこまでも青かった。
スノーホワイトが空に向かって吐いた、何の意味もなさない、言の葉にすらなっていない何かは宙に溶けては消えて行く。
死ぬほど気持ち良かった。
抱きついた男の身体はひどく熱かった。
健康的な色に焼けたメルヒの肌は、男の癖に妙に滑らかで肌触りが良くて、抱き合っているだけでとても気持ちが良い。
今自分を犯しているこの男がスノーホワイトに従順な下男で良かったと心の底から思う。
何故ならば「結婚してくれ」とか「子供を産んで欲しい」とか、その手の無理難題を言われたら、今の俺は絶対に拒めそうにない。
「姫様、姫さま、……ひめさ、ま…っ!」
メルヒの突き上げがどんどん激しくなって行く。
「っん!……はぁ、あ、ああああぁぁッーーーーーーーー!!」
胎に熱い物を吐き出され、とろける様な恍惚感と狂おしいほどの充足感に満たされながらスノーホワイトは深い眠りに誘いざなわれた。
―――と、思ったのだが。
「う……、」
一歩遅れて、充血の引ききらない肉の合わせ目がほころびて、濃く煮つまった男の白い情熱がどろりと溢れ出た。
腰から背骨の辺りにかけて、酷くだるかった。
腹の底はまだ鉛を呑みこんだような重苦しい感覚が残っている。
据えられた置物のように体は重く、瞬きするのも億劫に感じた。
「すみません、年甲斐もなく興奮してしまいました。……次は姫様の背に負担がかからぬよう、この体位でいたしましょう」
「……は?」
スノーホワイトの細腰をひっ掴み、自分の膝にまたがらせた男に俺は自分の耳を疑った。
(嘘だろ、まだヤんの……?)
サアアアッと顔が紙の様に青ざめて行くのが自分でも分かる。
「や、メルヒ、私は、その、もう充分満足したと言いますか、」
「遠慮なさらないで下さい、主を悦ばせるのも臣下の勤め……です」
「いらない!ムリ!もう結構ですっって、んっ!?――ッは、あ、……ッいや、だめ、だめ、…ちょ…!まっ、…嫌ァあああああ!! 」
男の膝の上で揺さぶられながら俺は思った。
オッサン、ハッスルしすぎだろ!
お前いくつだよ!いや、男って30過ぎてもこんなに回数こなせるもんなの!?
****
―――事後。
立てなくなったスノーホワイトの体を泉でバシャバシャ洗いながら、メルヒは「申し訳ありませんでした…」と頭を下げた。
事後のメルヒはスノーホワイトの良く知るメルヒだった。
爬虫類の様に表情の変化が乏しくなったその顔に、情事の最中の事を思い出し「本当にお前悪かったと思ってんのか!?」と引っぱたきたくなるが、その衝動を堪え口元に笑みの様な物を浮かべてみる。
「い、いえ…」
誘ったの俺の方だしな…と思いながらも、セックス酔いをした頭のまま首を横に振る。
酔ったのは頭だけでなくどうやら体ものようだ。
奴の人間離れした大きさの物で散々内臓を揺さぶらされたか、世界はまだグルグル回っている。体の平衡感覚もなかった。
体の中の内臓と言う内蔵全ての調子が悪く、嘔気もあった。
彼の物を受け入れた入口と中の粘膜はヒリヒリしている。
(巨根、恐るべし…。)
気持ち悪い。だるい。具合悪い。……でも、あー、うん、すっげー良かった。
ウニコーンの唾液が全て落ちたせいか、それとも何度もイキまくったせいか、謎の爽快感もある。
体がだるい事には違いないが、妙にスッキリした気分だった。
「これから、どうしますか?」
「どうしましょうか。……メルヒ、あなたもお義母様に追い出されたの?」
グラグラする頭を抑えながら問うと、メルヒは俺の良く知るいつもの愛想もそっけもない顔のまま答える。
「いいえ、私は彼女の横暴に耐え切れず辞職してきました」
「そう…」
「私は先代様の時代からリンゲインの王族に仕える身です、私の全ては姫さまの物です、どうぞご自由にご用命下さい」
「あ、ありがと」
会釈で返しながら、これって「俺のちんぽ使いたかったらいつでも言ってくれって事だよなー」と不謹慎な事を考えた。
いや、勿論献身とか従属とかそっちの意味なんだろうけど。
メルヒ曰くもうリンゲインには帰らない方が良いとの事だった。
この森を突っ切って隣のリゲルブルクに逃げ、親交の深いリゲルブルクの王室に助けを求めるのが良いのではないかと彼は言う。
確かにリゲルの王族は皆スノーホワイトの身内なのだ。
今は亡きベルナデット王妃は、スノーホワイトの母親の従姉妹に当たる。
(そうか……そうだった。そう言えばあの王子 はスノーホワイトの遠縁だったっけ…。)
意地の悪い継母に虐め抜かれ、ついには殺されそうになった可哀想な姫君に、リゲルの身内なら恩情を与えてくれるだろう。もしかしたら兵を出し、リディアンネルを討ってくれるかもしれないと言うメルヒの言葉に、俺は笑顔のまま固まった。
「えっと、それは……。」
―――そんな事になったら、恐らく…、
リンゴーン、リンゴーン、
『ご成婚おめでとうございます!』
『アミール国王陛下!スノーホワイト皇后陛下!!』
『美男美女でなんてお似合いの夫婦なのでしょう!』
教会の祝福の鐘が鳴り響く中、色とりどりの花吹雪とライスシャワーが舞い、次々と花火が打上げられる。
いつまでも止む事のない国民達の大歓声と拍手喝采の中、大通りをオープニングセレモニーの馬車が現れる。
生花で飾りつけられた華やかな馬車の上で揺られながら、国民に笑顔を振りまく玲瓏たる美男美女は、――…アミール王子とスノーホワイトである。
ハラハラと振り出した粉雪に二人は空を見上げた。
『どうやら大神も私達の門出を祝福してくれているようだ。――見てごらん、スノーホワイト、雪だよ』
『本当だわ、とても綺麗ですね』
『可憐な冬の妖精達の舞いの様に軽やかに舞い落ちる風花も、こうして手で触れれば儚く消えてしまうひとひらの雪のその刹那的な美しさも、神秘性を秘めた幻想的な雪の花のこの白さも、――…スノーホワイト、あなたの美しさの前では霞んでしまう』
『そんな、アミー様、恥ずかしいです…』
『ふふ、照れた顔も可愛いね。スノーホワイト、ほら、その可愛いらしい顔を私にもっと良く見せて? あなたの様な素晴らしい女性と結婚出来るだなんて、私はやはり世界で一番幸せな男だね』
『アミー様、だ、だめです。大勢の方々が見ていらっしゃいますわ…』
『たった今、神の下で永遠を誓い合った若い二人が口付けを交わす事に一体どんな罪があると言うの? ほら、皆、私達を祝福してくれているよ。見たい奴には見せてやればいい』
『もう…』
『そんなに拗ねないで?今夜からあなたが私だけのものになるなんて、嬉しくて嬉しくて仕方ないんだ。これが浮つかないでいられるものか。……でもあなたは拗ねた顔も可愛いね、夜が待てないよ。ここで押し倒して、今すぐ食べてしまいたい』
『……私、怒りますよ?』
『ははは、ごめんごめん。どうか機嫌を直して、私の可愛い姫 ?』
アミール王子はこくんと小さく頷くスノーホワイトの掌を取ると、純白のレースの手袋ごと口付けをした。
そして真剣な瞳をして顔を上げる。
『――――…私は命を懸けて君を守ると誓おう。たった今、この空から降って来たばかりの清らかな六出花達よりも、白く透き通った君の汚れなき心身をどうか私に守らせてくれ。この命尽きるまで』
『アミー様……』
それはいつの日か姉に見せられた、アミール王子の True END のムービーの映像だった。
甘クサイ台詞にゾワゾワと全身に鳥肌が立ったその時、また頭の中に選択肢が浮かんだ。
1「そうだわ、アミー様に助けて貰いましょう」
2「リディアンネルを討ち、私がリンゲインの正統なる女王として君臨しましょう。メルヒ、私を手伝いなさい」
3「そんな、お義母様が可哀想です!」
・・・・・・・・。
あー、うん。なんつーか、もう分かってきたわ。3だろ3。
1がアミール王子ルートに入るんだろ。2はなんだかバッドエンド一直線っぽい。きっとこのゲームの事だから兵士達の肉便器エンドとかになるんだろ?これ3だわー、絶対3だわー。
「お義母様が可哀想です、彼女にだって何かしらの理由があったはずです」
「あんな酷い仕打ちを受け、命まで狙われたと言うのに、……姫様は本当にお優しい」
ピコーンと言うお馴染みの音と共にメルヒの背後で上を向く矢印が見えた。
(あれ。これでいい…んだな……? 間違ってないよな……?)
猟師は今のスノーホワイトの言葉にえらく感動したらしい。
昂ぶり涙で潤む瞳と僅かに赤く染まったその頬に、俺の頬を一筋の汗が流れる。
「そう言えば、姫様はあれからどうなされていたのですか?」
「私は……今、ある方々の家で厄介になっていて」
それからスライムに襲われた一連の流れで、今、この森の奥の小さな小屋で暮らしているアミール王子の世話になっていると言うとメルヒは表情を和らげた。
「戻りましょう、アミール王太子殿下なら姫様を悪い様にはしないはずです」
いやいやいや、なんでそうなんのかな。
俺があの小屋を出て来たって事で察してくれよ。
「正直私一人では姫様を守りきれるか怪しい…」
そう言って眉を顰めるメルヒ曰く、リディアンネルは人間ではなく魔女なのだそうだ。
そして彼女は凶悪な魔獣や、妖魔までもを使い魔として使役しているらしい。
しかし隣国の友好国の王子様ご一向の庇護の元にあるのならば、彼女もそう簡単に手出しは出来ないだろう、と。
(そうか…やっぱり戻るしかないのか……。)
スノーホワイトの瞳が虚ろになったその時だった。
「スノーホワイト!!」
聞き覚えのある声に後を振り返ると、一頭の白い馬がこちらに向かって駆けつけて来る所だった。
「ああ、良かった!!」
噂をすれば何とやら。
馬上から飛び降り、スノーホワイトをひしりと抱き締めらるその金髪 の美男は、言わずと知れずアミール王子その人だ。
「ったく、この私の手を煩わせるとは良い度胸ですねぇ」
「イルミ様…」
「スノーホワイトおおおおおお!!心配したんだからね!!悪い子!悪い子!!悪い子!!」
「ひ、ヒル…?」
「スノーホワイト、何か困った事があったら何でも僕に言ってねって言ってたのに、もう!酷いよ!なんで僕に何の相談もなく出て行くの!?」
「エル、うん…」
アミール王子に一歩遅れて、駆けつけて来た馬の上から飛び降りるとスノーホワイトを取り囲むのは見知った顔の男達で、俺は目を白黒させた。
なんだか毒気が抜けて来てしまった。
―――って、流されるな、俺! ってかスノーホワイトちゃん!!
「わ、私帰りません!!」
「姫様」
嗜める様な声を下男が出すが、俺はプイッとそっぽ向く。
「私の何がいけなかったの? もしかして愛が足りなかった?」
「その逆です!!」
困った様に微笑む王子様に俺は叫んだ。
お前等盛り過ぎ!身が持たない!少しはこっちの負担や体力について考えろ!と言う内容を、スノーホワイトちゃんのお口から、プリンセスらしいお上品な言葉のオブラートに包んで言うと、男達は目配せをし合った。
「一人一日一回までって、これでも私達は我慢していたつもりなんだけど」
「それでも多い!!こっちは一日四回なんです!!それに絶対に四回じゃ終わらないでしょう!!」
話し合いの末、すったもんだで一日一回、日替わりで交代性と言う事で決着した。
ただスノーホワイトが恋人達を誘うのは有りとの事らしい。
なんだそれは。いや、俺誘わないぞ。
そんなやりとりをしているとごほん!と咳き込む大男の姿に、彼等もようやくメルヒの存在に気付いたらしい。
「その男は?」
「私は先代様の代から、リンゲイン王家に仕えている者です」
「私をこの森に逃がしてくれた人で、」
「じゃああなたは私と姫 の恋のキューピットだね、ありがとう」
「はあ?」
「メルヒ、こちらがリゲルブルクのアミール王太子殿下で、こちらが宰相の、」
―――そして森の奥の小屋に帰宅した後、お約束通り開催された6pに俺は頭を抱えた。
俺は誘わなかった。
誘ったつもりは一切なかった。
しかし「その仕草は誘ってる」「その表情は誘ってる」「その目付きは誘ってる」と意味の分からない難癖をつけられスカートを捲られて、「その下着は誘ってる」と訳の分からぬ言いがかりをつけられて、いつもの様におっぱいモミモミ割れ目サワサワされてる内にスノーホワイトの体は出来上がってしまい、「ほら、やっぱり私が欲しいんでしょう?」「素直になりなさい」「俺がんばるっ!」「たっぷり愛してあげる」「……姫様」と言う流れで、気がついたらおっぱじまっていたのだ。
(なんだこれ…なんだこれ…。)
頭が痛い。
外の空気でも吸って気分転換でもするかと思い、小屋の外に出ると小屋の前にはメルヒが居た。
薪割りをしているその姿に懐かしさを覚えながら、近くの切株に腰を下ろして彼の仕事ぶりを見守る。
「メルヒ、薪割りを手伝ってくれていたんですね、ありがとうございます」
「…………。」
「どうしました?」
「いえ、……まさか姫様が複数でなさるのが好きだったなんて」
「……は?」
「少し、驚いてしまいました」
「違います、別に好きじゃありません」
無言で頷く猟師の頬は良く良く観察してみるとうっすら赤い。
ああ、なるほど。この猟師ははBashfulなのか。
Dopey、Doc、Happy、Sneezy、Bashfulと攻略キャラが順調に五人も揃ってしまった。
―――このゲームの強制力から逃げられる気がしない。
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