3・ありがちですよね!主従モノ!!
メルヒの話によると俺が一角獣 だと思っていた生物はウニコーンと言う低級魔獣 の一種で、ケンタウロスだと思っていた生物は人妖の一種らしい。本物のケンタウロスならば頭髪が炎の訳がないだろうと言う猟師のそれっぽい説明に、この世界の魔物事情に納得する俺だった。
猟師の話によるとウニコーンは淫獣の一種なのだとか。
ウニコーン達は若く美しい人間の処女が大好きで、森に迷い込んだ処女を見つけると破瓜して三日三晩愉しむと言う。その後は自分達の群れが信仰している泉に供物としてその少女を沈めるらしい。
ちなみに処女でなければ騙されたと怒り狂い、額の角茎で飽きるまでその体を弄び、子供が産めなくなるまで自分達の苗床として使うのだとか。ウニコーンと人間の合いの子はあのケンタウロスの様な形の人妖となる事が多いらしい。そうして産ませた人妖達に泉を守らせるのだそうだ。
ウニコーン怖ぇ…、そこまで処女厨極めてどうすんだよ…。
そしてこんな生物がうようよしてる乙女ゲームの世界も怖過ぎる…。
「……助けてくれてありがとうございました」
そんな恐ろしい連中から救って貰ったとなると、俺の頭も素直に下がった。
何故ならばウニコーンの苗床ENDは、昔姉から聞いていた覚えがあったからだ。
つまりこの猟師が助けに来てくれていなければ、俺はウニコーン達の苗床となり生涯を終えていたのだろう。想像してみただけでも恐ろしい。
(そうだ、確かまだあった……。)
確かイルミナート・エルヴァミトーレの鬼畜兄弟の選択肢を間違えても、何らかの苗床ENDとなった様な気がする。
しかしもう既にあの二人は俺の前に登場しているのだ。
気を引き締めてかからなければならない。
「頭を上げて下さい。もとはと言えば、もっと早く姫様を探し出せなかった私が悪い」
「い、いえ。私もいけないのです、折角メルヒがくれたお守りを落としてしまったから…。」
あの日、継母に白雪姫 を森の奥で殺して心臓を持って来いと命じられたメルヒは「どうかどこか遠くにお逃げください、姫様」と言って、俺を逃がしてくれた。
しかし森は危険だ。
か弱い姫君をこんな場所に置き去りにすればどの道すぐに死んでしまうだろうと思ったのだろう、彼はすぐに戻ってくるとスノーホワイトに魔物避けのお守りを渡した。
とは言っても護符も万能ではなく、強力な魔獣や妖魔の類になると意味がない。そしてその効果は1ヶ月も持たないと言われている。
なので俺はこの森を良く知っている凄腕猟師が、「ここなら魔物は来ない」と言う大木の樹の穴の中で身を潜め、ジッとしていた。
彼がすぐに迎えに来ると言うのでしばらく大人しく待っていたのだが、ここで乙女ゲームの強制力が発動する。
喉の渇きを覚えたスノーホワイトは川を探して森の中を彷徨い歩き、メルヒに貰ったお守りを落としてしまう。
そしてスライムに襲われたスノーホワイトはアミール王子と出会い、話は冒頭へと舞い戻る。
「姫様はあれからいかがなされていたのですか?」
「私ですか?親切な方に助けて戴いて……」
子供の頃から自分を知っているこの男に、その流れで隣国の王子にラッキースケベをされて処女を奪われたとは流石の俺も言い難かった。
しかし怒り狂ったウニコーン達に、陰茎ではなく角茎で襲われていたスノーホワイトを見たこの男は、もうスノーホワイトが処女ではない事を察しているだろう。
メルヒに肩に掛けて貰った上着で身を隠しつつ、スライムに襲われた時の話をしていた時の事だ。
ドクン、
(え……?)
心臓が大きく跳ね上がり、眩暈を覚えた俺は目の前の男の胸の中に倒れこんだ。いや、正確には胸ではなく腹部か。
40cmはあるだろう身長差に、朦朧としながらメルヒの顔を見上げる。
頭は霞がかかった様にぼんやりとして、思考がどんどん鈍くなって来ている。
「あれ……私、なんか…、」
「姫様?…………もしやウニコーンに、粘膜の部位を舐められましたか」
頷くとメルヒは渋い顔になった。
メルヒ曰く、ウニコーンの唾液には催淫効果があるのだとか。
その唾液で無痛状態で快楽だけ与え乙女を破瓜させて愉しむのだそうだ。
女を苗床にする時も、その催淫効果により快楽浸けにされた女たちは逃げる気も起きなくなってしまうらしい。
ウニコーンの催淫効果は出産の激痛まで快感にすり替える。
一度出産してしまうと奴等の子を産むのが病みつきになってしまい、女達はもう人の世に帰る事など考えられなくなってしまうらしい。出産の快楽を知ってしまうともう手遅れで、例えウニコーンたちの元から救出したとしても、自ら彼等の元に帰って行く様になるのだとか。
それを聞いて、俺はこの世界は本当に18禁乙女ゲームの世界なのかと訝しんだ。
いや、だってさ…、男性向けのヌキゲー並みハードじゃね?
(なんだこれ……?)
話している間にも、前後不覚の状態に陥り体がフラフラとして自力で立っているのが難しくなって来た。
実はさっきから下腹の辺りに違和感があった。
月の物が来た時の様にどんよりと重苦しい感じがしていたのだが、その痛みに似た、しかし痛みだけれはない何かが急速に膨らんで行く。
ふと股の付け根の肉の閉じ目から、何かがどろりと滴り落ちる気配に慌ててその部分を手で押さえた。
(あ…れ……?)
生理が来たのかと焦り、こっそりと確認するがそうではなかった。
手の平を濡らした熱いしたたりは、情事の最中秘めやかな場所から零れ落ちる悦びのほとばしりと同一の物だった。
(ウニコーンのせいか、……くっそ、あの馬め)
スノーホワイトの体は発情していた。
(だめだ……頭がクラクラする……)
下腹の切ない疼きはいつしか身を焦がす様な熱い熱に変わり、体がガクガク震え出す。
―――もう子供ではないスノーホワイトは、この熱を発散させる手段も、禁断の果実の味も、その甘美な蜜の味も知っている。
『夜着は私が脱がせてあげようね、このままじゃ貴女も辛いでしょう?』
『ん……ッん、……は、ぁ』
『ほら、起きて? 夜はそんなに長くはないのだから』
『な…に……?』
『人生だってそうだ。残酷な運命の女神がまた、私達をいつ悪戯に引き裂いてしまうかも判らない。――…だから、ねえ、私のスノーホワイト。他の皆が起きる前に、私と愛を確かめ合おう』
『ッあ!……だめ! そん、な……いきなり……っ!』
いきなりでも、無理矢理でも、強引でも、不本意でも。――触れられれば最後、抵抗する気も起きなくなってしまう。
散々快楽を教えこまれたこの体は、抗うのが馬鹿くさいと思うほど、ソレが悦いと言う事を知っている。
―――だから。今すぐあの猛々しく脈打つ熱を自分の中に捻じ込んで、乱暴に腰を掴んで、奥までグチャグチャに掻き回して欲しい。
(って、今何考えた。誰を何を思い出した、俺……。)
「大丈夫ですか、姫様」
フラつくスノーホワイトの体を押さえる大きな男の手を見つめ、ハタッとある事を思いついてしまった。
(目の前には調度良く手頃な男が……って、おい、ちょっと待て。)
俺は頭をブンブン横に振って、自分を落ちつかせる為に大きく息を吸って吐いた。
「え、ええ。どうすれば良いのですか……?」
「分かりませんが、恐らくウニコーンの唾液を洗い落とせば……」
「そ、そう……です…ね」
確かに一理ある。唾液を全て洗い流せばなんとかなるかもしれない。
とりあえずこの男が裸のスノーホワイトを見ても襲ってくる気配がないので安心したが、ガクガク膝が震えて俺はもう立てなくなっていた。
「すみません……メルヒ、あしが、」
「……失礼します」
メルヒはスノーホワイトをひょいと軽く肩に抱き上げて泉まで戻る。
「っ!ぅあ!……あっ、ああ、ッぅ」
彼が一歩歩く度に肩に担がれた体が揺れ、その振動にまで感じてしまい、自分の肩をギュッと抱き締めた。
メルヒもこのスノーホワイトの様子には戸惑っているらしい。
昔から表情の乏しい男だったが、その瞳の中には動揺の色がありありと滲み出している。
秘所を押さえビクビク痙攣するスノーホワイトを、彼は躊躇いがちに泉の中に降ろした。
「……ご自分で、洗えますか?」
確認がてら聞かれるが、こちらはもうまともに話せる状況ではなかった。
男は分かったと言う様に一つ頷くと革靴を脱いだ。
そのまま泉へと入って行き、自分の膝の上にスノーホワイトの体を横たえる。
「っは!あ、あぁっ……は、はあ、はあ、……ッん!」
この時点でスノーホワイトの理性は崩壊していた。
うずうずと疼いて仕方のない部分を押さえていただけのはずの手は、いつの間にか自分で自分を慰めている。
そんなスノーホワイトに彼は短く「失礼します」とだけ言って、彼女の指を秘唇から引きぬいた。
「だめぇ……!そこ、さわりたい…の……っ!!」
「駄目です姫様、まずはユニコーンの唾液を洗い流さなくては」
「ふぇぇ、やぁ、いや……っ!あ、あぁ……ッん!」
メルヒは左手でスノーホワイトの両手首を抑えると、右手で彼女の秘所を恐る恐ると言った手付きで洗い出した。
パシャパシャと水をかけながら、剥き出しの割れ目の部分を開かれる。
「っひぁ、ん、……はあ、あ、あっ!あぁ…っん!」
この状況は一体何なのか。
何故か自分は肌を隠す物が何もない状態で泉の中にいる。
スノーホワイトは太陽の光が燦燦と降り注ぐ中、子供の頃からの自分を良く知っている男に脚を開かされ、恥ずかしい部分を指で洗われていた。
そんな非日常すぎる風景に、一国の王女であったスノーホワイトの日常は一体どこで狂ってしまったのだろかと考える。
継母が城に来た日からだろうか?
それともこの森に来てから?
いや、生まれて来た時点で既におかしかった。――何たってキモオタの俺がこんな美少女に転生したんだから。
その時、近くで魚がぱしゃんと水面を飛び跳ねた。
魚の鱗が太陽の光りを反射して光る。
こんな明るい場所では、秘められた花もその奥の肉の洞も全てが丸見えだ。
猟師にされるがまま、俺は朦朧とこの非日常の風景を見守った。
花唇の左右にある可憐な花びらの色や、中の鮮やかな粘膜の色まで良く見えた。
なんだかんだでいつも傍に誰かいるし、俺はスノーホワイトちゃんの裸をこんなに明るい所でマジマジと観察した事はなかった。
昔見た洋物無修正の動画よりも美しい、色素沈着のしの字すら見付からないスノーホワイトちゃんのパーフェクトボディーに我ながら関心する。
ここまで美しいと、服を着て隠す事の方がむしろ罪悪だとすら思えた。
美術館にある裸婦画や彫刻の様に、裸でも恥ずかしくないと言うか、むしろ裸そのものが芸術だとでも言うか。
ほら、銭湯とかでも恥ずかしいから皆隠す訳だし。
自分のブツに自信があるズル剥け巨根野郎は、大浴場でもタオルで股間を隠したなんかしないで、見せびらかす様にして堂々と男湯に入ってくるだろ?でも自分の息子に自信のない奴や皮被ってたりする奴は、タオルで隠したり、見栄剥きしてちょっと膨脹させながら風呂に入って来るあの原理。
(なんで俺がこのパーフェクトボディーの美少女なんだろう…、なんでこの美少女に俺だけハメられないんだよ…。)
毎度の事ではあるのだが無性に泣きたくなってきた。
「っぁ、は、っは、はあ、あ」
しかしそんな風に猟師の大きな手に洗われている場面をじーっと見ていたのがいけなかったのかもしれない。
(やば…い……っ!)
体の奥でジリジリ燻っていた熱が、大きな音を立てて燃え上がって行くのを感じる。
バシャバシャと秘所にかかる水は腫れぼったくなっている部分の熱を冷ますどころか、そのささやかで物足りない刺激に焦らされるようにして体の熱は高まって行く。
「恥ずかしいです」と言っていやいや首を横に振ると、猟師は無言で頷いた。
柔かな肉の狭間のぬめりを落とす様に、メルヒの大きな手が透明な水の中で上下に動いている。
メルヒは赤く充血している肉の芽にもウニコーンの唾液が付着している事に気付いたのだろう。スノーホワイトのその鋭い感覚のかたまりをにゅるにゅると洗い始めた。
「ひ、あ!……んっ……んん!」
洗われているだけなのは分かっている。
分かっているのだが、――…ウニコーンのぬるぬるしつこい唾液を落とす為に熱心に花芯を擦られて、揉みほぐされてゆく内に、スノーホワイトのその小さな尖りは屹立してしまった。
「ぁ……や…やだ……、」
苞を半分押し上げたその尖りにメルヒは、その中までしっかり洗った方が良いのだと思ったらしく、指で残り半分の皮を剥く。
「きゃあ……っ!?」
「姫様、がまんです…」
包皮を剥かれ完全に露出した敏感な部分を押し潰すようにされたり、周りの溝にたまっている唾液を落とす為に、丸を描くようにゆっくり撫で回す様にされると、もうスノーホワイトは嬌声を抑える事は不可能になってしまった。
「っ!――、ッん、あ、あ!」
「……すみません、もう少しの辛抱です」
膝の上で体をビクつかせるスノーホワイトに、彼は戸惑いがちに言う。
「もしや、中にも舌を挿れられたのですか?」
「は、はい、舌、ナカにじゅぶじゅぶ、され、て……ッあ、ふぁあっっ!!」
「……失礼します」
無骨な男の無骨で太く長い指が蜜をいっぱいに溜めこんでいる部分に潜り込み、ウニコーンの唾液の混ざった蜜を掻きだそうと動く。
「や……っ!いあ…、あ!あぁっ、」
恥ずかしい部分をまさぐっている指のその動きは、手淫と何ら代わりがない。
男根の抽挿を彷彿させるその指の動きに、スノーホワイトの呼吸はどんどん乱れて行く。
泉の中だと言うのもいけなかった。
下手に水に下腹部を浸しているので、彼が手を動かす度にバシャバシャと水音が派手に鳴る。
それがとてもいやらしく聞こえ、耳を塞ぎたくなった。
少しウニコーンの唾液が少し落ちたせいか思考は正常に戻りつつあったが、自分の体でありながら、自分の意思に反して反応する体に気付いてしまえば最後、逆に羞恥心を煽られるだけだった。
「メル、ご、ごめんなさ、い、……ッあ、ああっん!……こんな事、させ、て……っ!」
「……い、いえ」
「ッあ!や、あん、でも、あっ!そんな、そこ、だめ!……あ、あた、し……ん、ッあ、あぁぁ……っ!」
「……もう少しの辛抱です。姫様」
感じまくっているスノーホワイトとは対極的に、男の口調は淡々としたものだった。
もしや呆れられているのだろうか?
一国の姫であると言うのにどうしようもない娘だ、はしたない娘だと軽蔑されているのだろうか。
そう思う何だか無性に恥ずかしくて、自分が自分で情けなくて泣きたくなって来た。
声を抑えなければと思うのに、しかし中に入れられたウニコーンの唾液を掻きだそうとする指の動きに、糖蜜の様に甘ったるい声は止まらない。
「あ……、」
その時、自分を膝に乗せた男のズボンが大きく膨らんでいるのに気付いた。
調度顔の脇にあるその膨らみに気付いた瞬間、スノーホワイトの中にあった羞恥心は掻き消える。
(メルヒも、興奮してる……)
恥ずかしいのは自分だけではないと言う安堵感を感じるのと同時に、ゾクゾクとした物が背筋を駆け上がる。
(これ、ほしい…)
もう、本能だとしか言い様がなかった。
スノーホワイトはそのまま身を捩るとメルヒの腰をつかみ、ズボンの上から彼の肉の塊に舌を当てた。
「姫様、何を……?」
驚きの声を上げるメルヒを無視し、先端部位だと思われる部分を布越しにちゅうちゅう吸う。
男の匂いがした。
少しだけしょっぱい興奮してる雄の味に、口元に笑みが浮かぶ。
「ひめさま、いけません……」
「でも、これ、ほしいの、……ほしい、の…っ!」
いつしかメルヒが押さえられていたスノーホワイトの手は解かれており、俺はそのまま彼のベルトを外し、ファスナーも外した。
ズボンの中から顔を出すそそり立つ肉塊は今まで見た事もない信じられない大きさで、一瞬我が目を疑った。
王子達の陰茎も大きいと思っていたが、これは彼等の大きさを優に越えている。
亀頭の大きさが自分の拳程の大きさがあるそれに、しばし呼吸をするのも忘れ見入ってしまう。
(これって、マジで中に入るんのか……?)
長さは30cm、40cm?……いや、もっとあるかもしれない。
こんな大きい物で体を貫かれたらどれだけ気持ち良いだろう。
こんなの挿 れられたら、挿れられた瞬間イッちゃうかも。
と言うか裂けて出血するかもしれない。と言うかと言うか、小柄なスノーホワイトちゃんの中にこんなの挿れちゃったら、俺、死ぬんじゃね? だってこれ、どう考えてもどう見ても明らかにデカ過ぎる。
なんだか妙に喉が渇いていた。
ゴクリと唾を飲み込むと舌が上顎に引っ付いて、乾いた音の咳が出た。
「姫様と私では、身分が、違いすぎます」
ゆっくりと左右に首を振るメルヒは、自らの衝動に身を任せ、この凶器でスノーホワイトを犯す気はないらしい。
(仕方ない……。)
「メルヒは、わたしの事、きらいですか……?」
大きく口を開き、限界まで伸ばした舌を見せ付ける様にして、飴色に光る男の怪物に這わせながら彼を上目遣いで見つめる。
「し、かし、……私は先王陛下の時代から、ひめさまを、」
うっと顔を顰める大男を見て、確信する。
―――落とせる。
スノーホワイトの美少女アイコンがこんなにも頼もしいと思った事はなかった。
「つらいんです……どうか、メルヒのこれで、私を慰めてはくれませんか…?」
メルヒの琥珀色の瞳が揺れる。
口の中に収まりきらない巨大な亀頭の先をチロチロと舐めながら、唾液と泉の水でびしょ濡れの猛りたつものを上下に擦りあげる。
男の物を扱く手首のスナップに、自分でも慣れて来たなと関心し、そして小さく苦笑した。
「あなたは今、正気ではない。……後で、絶対に後悔します」
(だろうね、俺もそう思うよ。)
自分から男を誘惑してるなんて、正気じゃない。
―――……でも、それでも今はこれが欲しい。
欲しくて欲しくて、堪らない。
「こうかい、しません。――…だから、ねえ、メルヒ、私を抱いてください」
****
―――一方リンゲインの王宮では。
「メルちゃんキタアアアアアアアアっ!!!!きょ、巨根!!巨根!!これが噂のメルヒの巨根なのね!!す、凄い凄い、想像以上に凄い!!エグイ!!うわ、あれ入るの!?入っちゃうの!?アキラ君の中に入っちゃうの!?えええええっ!?股裂けるでしょ!!いや、絶対痛いでしょ!?無理、無理だよね!?――……え、え、ええええええええええええええええええっ!!!?」
バンバンバンバン!!
えらく興奮した面持ちで隣に座る使い魔の肩をバンバン叩くアキ。
ベッドの上の固定位置に正座をしながら、鏡の中を見守る主の隣に待機する使い魔を包む空気は、――…とても冷ややかな物だった。
スゥッと開いた使い魔のパーシャンローズの瞳は氷の様に冷たい。
しかしそれに気付く気配もない彼の主は、両手の平で顔を覆い隠しながらも、指の合間から鏡の中の映像をチラチラ盗み見しながら叫ぶ。
「うわあああああああああああああ!!!!……はっ、入った!!入っちゃったあああああ!?…………すご!すごすごすごっ!わ、うわ、うわ、うわわわわわっ!!ねえねえ、あれどう思う!?痛くないのかな!?痛くないのかな!?」
「アキ様」
振り返るとズボンの前をはだけさせ、己の一物を露出させている使い魔にアキは飛び上がって後に仰け反った。
「ん?って、うわあああああああああ!?なに!どうしたのそれ!!なんかいつもよりも、ぼ、膨脹してない!?腫れてる!?大きいよね!?てかそもそもなんで脱いでるの!?」
「大きさは割りと自信がある方だったんですが。……しかしアキ様は、私のサイズでは物足りないご様子なので、いつもよりも20%ほど増量させてみました」
ガシッ!
笑顔の使い魔に押し倒されたアキは蒼白となる。
「それとももっと大きい方がよろしいですか?そうだ、私達も触手や淫蕩虫を使ってみましょうか?アキ様も興味がおありのようでしたし?」
鏡の妖魔の燕尾服の背中の部分が裂け、にゅるにゅると伸びて来た触手にアキの顔に冷や汗がダラダラと流れ出す。
(そうだ!!すっかり忘れてたけど、コイツ人間じゃなかったんだ!!)
「ち、ちがう!誰も物足りないなんて言ってない!!」
「嘘おっしゃい!涎を垂らしながら猟師の巨根を見ていたくせに!!」
「失礼ね!涎なんて垂らしてないから!!って、ぎゃ!ちょ、ま、待ってええええええええええっ!?」
「待ちません!男の嫉妬は怖いんです!その身を持って思い知って下さい!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアッ!!!?」
―――その後、使い魔に襲われたリディアンネルは楽しみにしていたメルヒとスノーホワイトの巨根プレイを見逃してしまった。
しかし彼女は見逃してしまったシーンを使い魔に「鏡で見せて」言う気力も勇気もなかった。
ぐったりとベッドの上に横たわる自分の髪の毛を一束手に取ると、愛おしそうに口付ける男を見ながら思う。
(この人って、…………私にとって、何なんだろう?)
カラスの姿に変化して部屋の窓枠に待機している他の使い魔達とこの使い魔は、自分の中でも何かが違うと言う事にアキも気付いていた。
窓から入って来た若葉の香りに誘われる様にして、重い瞼を閉じる。
もうすぐ夏が来る。
夏が来る直前のこの独特の青臭い緑の香りと、雨上がりの土の香りは、不思議な事にこの世界も向こうの世界も同じだった。
(あっちの世界は、今どうなってるんだろう……?)
アキはあれからずっと鏡の妖魔に元の世界の話を聞けずに居た。
何とはなしに自分の使い魔の端正な横顔を見上げてみる。
「どうしました?」
目が合うと擽ったそうな顔で笑う男からスッと目を反らす。
(聞けない……。)
最近思うのだ。
もしかしたらここは自分の夢の世界なのではないか、と。
ここは自分が逃げたかった現実から逃げた先の夢の中なのではないのか、と。
ずっとここに居たいと願っても、どんなに目覚めたくないと思っても、朝が来てしまえば無情に終わってしまう夢。
(私は、ずっとどこか遠くに行きたかった……。)
つまらない毎日。代わり映えのない日々。
そんな毎日が退屈で退屈で仕方なかった。
今日は何か楽しい事はないかしら?と期待に揺られながら満員電車に乗って登校するが、毎日変化と言う変化のないまま平凡な一日は終了する。
漫画やアニメの様に世界の存亡を揺るがす様な大事件に巻き込まれたり、身も心も焦がす様なドラマチックな恋愛をする事もなく一日一日が過ぎて行く。
こんなつまらない日々の延長線上で大人になって、結婚適齢期になったら親を泣かせない為に適当な男と適当に結婚して、子供を産んでおばさんになって死んで行くのだろうと思うとゾッとした。
そんな安易に想像出来てしまう自分の未来に絶望した。
大人になって働く事にも、誰かと愛し合って結婚する事にも何の夢が持てなかった。
大学は決まったが特に夢もない。やりたい事もない。
「アキ様?」
耳を擽る男の低い声は優しい。
聞けない。
聞いてしまったら最後、この夢から覚めてしまいそうな気がするのだ。
この世界ともこの男とも、お別れの様な気がして、――…聞く事が出来ない。
『アキ、アキラ、朝よ』
今、遠くでお母さんの声が聞こえた様な気がした。
カーテンを開けながら「早く起きなさい、今日も良い天気よ」と笑うお母さんの声。
(今日、学校休んじゃ駄目かな?)
お母さん、ごめんね。
―――……私、まだ起きたくないんだ。
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