折れないフラグ
3・王子はイクよ、なんどでも
(ん……?)
「私のシュガーが野菜泥棒?……可哀想に、お腹が空いていたのかな。言ってくれれば私が何か出したのに」
「しゅ、シュガー……?」
「ところで何故イルミが私の姫シュガーと一緒なの?」
「……アミー様、貴方と彼女は一体どのような関係だと言うのです?」
「どのようなって、将来を誓い合った仲だけど」
「あー……もしや、スライムから彼女を救ったと言うのはアミー様なのですか?」
「ああそうだよ、人命救助と言う理由こそあれど私は彼女の処女を奪ってしまったからね、責任を取り結婚する事にしたんだ」
「……アミー様は相変らず責任感が強いですねえ」
「あはははは、そんなに褒めるなイルミ」
「いえ、嫌味のつもりだったんですが」
どうやら俺は気を失っていたらしい。
目を覚ますと近くで男が二人、何やら話している様だった。
聞き覚えのある男達の声と、見覚えのある天井に偏頭痛が催される。
(ええっと……)
薄目を開け、俺は口論を続ける金髪と黒髪の美男を確認した後また目を伏せた。
景気が良い時代の異世界モノのアニメやゲームとは、主に異世界転移モノだったと言う。
突如異世界トリップした主人公は現地の美少女達に乞われるまま異世界を救うのだ。最終的には現実に帰るのが主人公達の目標で、それはどの作品でも共通事項だった様に思える。
幽☆霊☆白書、魔人英雄伝ワタル、OK騎士ラムネ&40等をはじめとした昔の名作アニメも大抵そうだ。
しかし日本が不景気になり、自殺率が飛躍的にアップし、夢のない国になってしまってからは違う。――オタクたちは皆、現実から逃げるように異世界に夢を持ってしまった。
それだけでない、人生をやり直したいとすら思う様になってしまったらしい。
昔のアニメは異世界を救い、自分に惚れた沢山の美少女達に「勇者様、どうかこの国に残ってください」と涙ながらに訴えられても、あっさりと現実に帰って来る主人公達が大半を占めたのだが、最近は違う。
異世界転移はなりを潜め、異世界に赤子から転生して人生をやり直すと言う異世界転生モノがメジャーとなった。
異世界に転生した主人公達は皆現実に帰りたいなんて思わなくなってしまったらしい。
異世界で結婚して子供まで作って、末永く幸せに暮らすのだ。
現実に帰りたいなんて言う主人公は、消滅したとまで言われているのだが――、
俺は現実に帰りたいぞ、おい。
男と結婚して末永く幸せに……、とかやっぱ無理だわ。想像してみただけで鳥肌モノだ。
「私は森の中で彼女に会ったのですが、……失礼ですがアミー様、彼女はアミー様と結婚したくなくてこの部屋を抜け出したのでは?」
「はあ?何故そう思うんだい、私と姫シュガーは将来を誓い合った仲だと言っているだろう」
誰がいつお前と将来を誓い合った、この抜け作。
「いやぁ、恐らくそれは勘違いだと思われますね。――何故なら、」
「何故なら?」
「彼女はもう、私から離れられない体だ」
「はあ?何を言っているんだお前は」
まったくだ、得意げな表情で一体何を言っているんだこの眼鏡。
狸寝入りする俺の脇で、男達はスノーホワイト(と言うか俺)の所有権を主張し、口論を始めた。
(どうしよう、こいつら……。)
―――まあ、ここまで来たら認めよう。認めるしかない。
女体やばい。
女体気持ち良い。
ちんぽも挿いれてみたら、実はそんなに悪い物じゃなかった。
でも、それでも俺の恋愛対象は男にはならない。
「薄紫色の触手」
「う」
「催淫効果を持つスライムは薄紅色の触手の方だ。……彼女を騙して手篭めにした男が良く言います」
「い、いやぁ、実は森の中が暗くて見えなかったんだよ」
「目が泳いでいますよアミー様」
「いや本当だって、最初は気付かなかったんだ。気付いた時にはもう彼女の純血を奪っていたし、それなら中途半端に終わらせるのは逆に失礼かなって」
―――おい、ちょっと待てこのちゃっかり屋さんが。
「……どういう事ですか?」
むくりと起き上がり半眼で王子を睨むと、アミール王子はぱああ!と顔を輝かせた。
「起きたんだね!おはよう、私の白砂糖姫シュガー」
「だからその呼び方やめろよ気持ち悪い!!」
「へ?」
思わず素が出てしまった。
「よくもそんな適当な理由で処女を奪ってくれたな!この抜け作王子!!」
「だから責任は取ると」
「そういう問題じゃない!!こっちにだって選ぶ権利はある!!」
俺の言葉にアミール王子は目をぱちくりと瞬かせる。
「シュガーは私の事が嫌いなのかい?」
「嫌いとかそういう問題じゃなくてだな、」
「私はずっとあなたと再会する日を心待ちにしていたのに、シュガーは覚えていないの?」
「は?」
―――その時、
ブワアアアア!!と、頭の中にお花畑の映像が広がった。
うふふふふ、あははははとその花畑を走る少年と少女。
『×××さま、待って』
『あはははは、こっちだよ!早く!』
少女の方は言わずと知れず幼少期のスノーホワイトだ。
少年の顔はぼやけて見えないが、この髪色と言い髪形と言いどっからどうみてもアミール王子である。
花畑のど真ん中にある大きな木の下まで来ると、二人は腰を下ろした。
『はい、お花』
『×××さま?』
『じっとしてて』
『は、はい』
幼少期のアミール王子らしき少年は、つんできた花をスノーホワイトの髪に刺す。
『やっぱり良く似合う、とっても可愛いよ』
『×××さまったら』
『10年後、この木の下でまた会おう。――その時は、』
『その時は?』
『ふふ、今は内緒だ』
意味ありげな事を言って微笑むアミール王子らしき少年に、不思議そうな顔でこてりと首を傾げるロリーホワイト。
―――俺は理解した。
(これ、スノーホワイトとこの王子の過去ムービーだ…。)
これは乙女ゲー、ギャルゲーに関わらずよくあるパターンなのだ。
ヒロインとメインヒーローが実は昔からの知り合いで、小さい頃からそれっぽい仲だったり将来の約束をしていたと言う設定で、大きくなってから再会するとか言うベタベタな展開で、ある意味この手のゲームのお約束なのだ…。
「私の事、覚えていない?」
その時、俺の頭の中に何故か3択が浮かんだ。
1「覚えています、あなたはあの約束の王子様だったのですね」
2「いいえ、覚えていません」
3「そう言えば今朝の朝食は何かしら?」
腹の減っていた俺は迷わず3を選択した。
俺の回答にイルミナートがしてやったりと言った顔で笑う。
「ほら、王子。みてみなさい、スノーホワイトは王子ではなく私が好きなのです」
「何故そうなる」
俺がイルミナートを睨むと、彼は眼鏡をくいっと上げ直しながら言った。
「私と王子、どちらか選んでください」
すると、またしても俺の頭の中に3択が浮かんだ。
1「あなたよりも王子の方がマシです」
2「両方とも、ありえません」
3「(正直、淫蕩虫いんとうむしプレイだけはまたしたい…。)」
俺は迷わず2を選ぶ。
ぴろりろりーんと言う音と共に、王子と眼鏡が破顔した。
二人のバックには何故か上向きの矢印が見える。
(あれ、おかしいな。……俺、選択肢間違えたか……?)
何故かこの二人の好感度的な物が上がってしまった様な気がする。
******
―――場面は変わって、スノーホワイトの継母リディアンネルの寝室。
「はっ!」
「どうしました、アキ様」
ガバッとベッドを飛び起きるアキに、鏡の妖魔もつられて起き上がった。
起き上がると神妙な顔で目元を押さえる主人の顔に、彼は戸惑う。
彼は主人の寝顔を見つめながら、何やら決死の誓いを立てていた最中だった。
「そろそろだわ…そろそろ、来る……!」
「な、何が来るのです?」
「アキラ君の入ったルートの流れからして、そろそろ来るはずよ…」
「だから何がです……?」
「アキラ君は、そろそろアミー王子とイルミ様のどちらかを選ばなければならないと言う、つらい選択肢にブチ当たるの…」
「はあ」
まさか彼女の未来に関係のある話かと思い内心ビクビクしていた妖魔は、想定外のどうでも良い話に間の抜けた声で返事をした。
「実はね、どの選択肢を選んでも……」
「選んでも……?」
「18禁バージョンの7人の恋人は、ここから3pに突入するって話なのよ!!」
「は?」
「鏡よ鏡、鏡さん」
「あの、王妃様、まさか……?」
「今のアキラ君の様子を見せて!!」
「うわあああああ!!やっぱりィっ!!?」
鏡の妖魔は頭を抱える。
僕しもべの心、主人知らずと言う奴である。
・・・・・・。
鏡に映された光景を見る限り、スノーホワイト達はまだ3pには突入していなかった。
主人に隠れてこっそりと安堵の息を吐く妖魔。
主人はと言えば、興奮した面持ちで拳を握りしめながら3人の会話を見守っていた。
「凄い!凄いわアキラ君!流石私の前世弟!!」
「な、何が凄いんです……?」
「二人とも拒んだ!!肉便器ルートに入らなかった!!」
「は、はい…?」
肉便……とか、何だか凄い言葉が聞こえた気がする。
ぽかんと口を開ける妖魔に、アキは人差し指を立てると得意気な顔で話し出した。
「私の前世の世界の乙女ゲーマー達はね、初回は必ずここでつまづくの。『白雪姫と7人の恋人』は元々コミケで発売された攻略本のない18禁同人ゲームだったのよ。それが口コミで広がり、人気が出て、爆発的にヒットし、大手ゲーム
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